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千葉の酪農家と牛乳工場がつくる、とびきりのアイスクリーム



新生酪農は、日本で初めて消費者が出資して建設した牛乳工場。1978年に生活クラブ生協が酪農家と共同して作った。千葉工場では、パスチャライズド牛乳の原料と同じ牛乳を原料として、ミルクの風味が生きたアイスクリーム類が作られる。酪農家の日々の努力がこれを支える。

牛乳の風味を生かして


バニラアイスクリーム


新生酪農では年間約20種類のアイスクリームとシャーベットを作っている。その中でもさらりとした舌ざわりで、新鮮なミルクの風味が口いっぱいにひろがるのがバニラアイスクリーム。原料は、提携酪農家が生産する牛乳(生乳)と、牛乳から作る脱脂濃縮乳とクリーム、北海道産のビートグラニュー糖、香料だ。「卵を加えず風味を生かし、牛乳そのものをまるごと味わってもらおうと作っています」と言う齊藤輝彰さん。新生酪農千葉工場で、10年以上アイスクリーム製造に携わっている。 

新生酪農千葉工場の齊藤輝彰さん


アイスクリームの製造は、まずセパレーターを使い、牛乳を脂肪分のクリームと無脂肪牛乳に分けることから始まる。次に無脂肪牛乳から水分を抜き、脱脂濃縮乳を作る。この時、新生酪農は、逆浸透膜(RO膜)と呼ばれるフィルターを使い、熱をかけずにゆっくりと水分を抜いていく。

この際、無脂肪牛乳を霧状にして熱風をかけて作る脱脂粉乳や、牛乳をそのまま加熱する加熱濃縮乳が使われることが多い。こうして作った脱脂濃縮乳に、分離したクリームを戻し、他の材料を加え混ぜて殺菌し、「ミックス」を作る。これに乳化剤や安定剤を加え、そのまま製品にしてしまうのが一般的だ。一方、新生酪農は、添加物を使用せず、「エージング」といって、ミックスを一晩ゆっくりと撹拌かくはんして水分と油分をなじませなめらかにする。

その後フリーザーで空気を入れながら凍結させる。この空気の混入割合を「オーバーラン」という。1リットルのミックスに、1リットルの空気を混ぜると2リットルのアイスクリームができ、オーバーランは100%となる。

市販のアイスクリームは同60%から100%。空気が多いと溶けやすくなるため、安定剤が必要となる。むろん新生酪農のアイスクリーム類(コーンタイプを除く)は安定剤不使用で、空気混入率も30%以下だ。

また、卵を加えるとコクが増し、乳化剤の役割も果たすので一般的には使われることが多いが、新鮮な牛乳の風味を十分に味わえるように、ほとんどの製品に卵を加えない点も新生酪農のアイスクリームの特徴だ。「一部を除いて、卵アレルギーの人も安心して食べることができます」と齊藤さん。卵を使っていないということが、意外に知られていないという。

アイスクリームミックスの充填機。機械を入れ替えて、バニラアイス475ミリリットルやコーンアイスも作る(写真左)、もれがないかなど、1個1個点検する(写真右)

当たり前のことを当たり前に

新生酪農では、脱脂濃縮乳を作る時、RO膜を通して無脂肪牛乳から水分を抜く。冷えると水分が通過しにくくなるので、その工程の温度帯は約27度。3トンの牛乳から1トンの濃縮乳を作るには3時間がかかる。「細菌がちょっとでも残っていると増殖してしまうので、乳質管理にはとても気を使います。超高温で滅菌した牛乳を使えば楽なのですが、それではもとの風味がなくなってしまいます。必要最低限の熱をかける殺菌をしています」と齊藤さんは言う。原料乳は、質の良いパスチャライズド牛乳の原料と同じだ。

市販の牛乳の90%以上を占める超高温殺菌牛乳は、130度2秒間殺菌。滅菌することができ、管理が悪く、細菌数が多い牛乳でも殺菌できてしまう。これに対しパスチャライズド牛乳の殺菌方法は72度15秒間。酪農家は牛乳を出荷するに当たり、耐熱性菌や生菌数の他に、大腸菌数、体細胞数などの厳しい基準値が求められる。

千葉県千葉市で酪農を営む伊藤祐介さんは伊藤牧場の3代目。父親の勝治さんは千葉工場に牛乳を出荷する「新生酪農クラブ」の組合員だ。新生酪農クラブは、千葉工場近辺で酪農を営む提携酪農生産者の団体で、ともに遺伝子組み換えでないトウモロコシや大豆かすで作る指定配合飼料をえさとして食べさせ、細菌数をおさえた質の高い牛乳を生産している。

祐介さんは小さいころから両親の仕事を見ており、自分も酪農家になると言い続け、20歳の時にこの仕事に就いた。毎月、関東生乳販売農業協同組合連合会で乳質の検査を行っているが、2016年、伊藤牧場は千葉県で3位、栃木、群馬、山梨など関東9県の中でも23位。脂肪や無脂固形分を多く含み、体細胞が少ない、良質の牛乳として高く評価された。

「基本に忠実に、牛の生理に合った飼い方をして、当たり前のことを当たり前にやっているだけです」と笑う祐介さんは中途半端が嫌いな性分だ。毎日朝晩きちんと搾乳し、牛の負担が一番少なく搾れるように個々の生理現象に合わせてミルカー(搾乳機)を使い乳房炎を防ぐ。

「乳房炎になったら治療すればすむことですが、抗生物質を使うので、その影響がなくなるまで搾ったミルクは出荷できません」。そうなると捨てなければならず、その間、収入もなくなる。「酪農家は牛を飼っていますが、同時に牛乳という食品を扱っているという意識を持って仕事をすることが、必要だと思います」

伊藤牧場の牛舎で。人が近づいてもゆったりとくつろいでいる(左上)、新生酪農クラブの伊藤祐介さんは酪農を始めて14年。1年365日、生き物相手の仕事だ。「牛乳をおいしいと言って飲む人がいる限り、続けますよ」(右上)、取材した日の午前中に産まれたばかりの子牛(左下)、牧草となるトウモロコシの畑。他の場所と合わせて9ヘクタールになる(右下)

減る一方の酪農家


ビールかすも、えさに混ぜる。祐介さんの父親、勝治さん(左)、直径と深さが8メートルほどのサイロ。4基で1年分のコーンサイレージを作る(右)

 
新生酪農千葉の牛乳工場がある千葉県は、以前、乳量では北海道に次いで全国で2位の生産県だった。しかし、30年前に2,100軒あった酪農家が、現在は約400軒に減ってしまい、新生酪農クラブの組合員も、15年度に23軒を数えたが、17年度は15軒となった。 飼料の価格が高騰し酪農を続けることが困難なうえ、消費者の牛乳離れが進み、酪農の将来像が描きにくく、後継者が育たない。

こうした状況の中、伊藤牧場は牧草を自給し、乳牛を育てる数少ない酪農家の一軒だ。9ヘクタールの畑でトウモロコシを栽培し、夏に刈り取ってコーンサイレージを作り、牛に1年間食べさせる。「牧草の値段が、自分が酪農を始めた頃よりキロ当たり10円ほど高くなったので、自給飼料は必要です」と祐介さん。牛舎に敷いていた草やもみ殻、牛のふん尿などで作った堆肥を畑にすき込むので、堆肥の処理も他に依頼しなくてすむ。

また、現在、肉牛が高く売れるため乳牛(ホルスタイン種)と和牛(黒毛和牛)を交配させ、生まれた「交雑種」を肉用として販売する酪農家が増えている。こうした動きが強まるなか、酪農家は高価な乳牛の子牛を買わざるを得なくなっている。しかし伊藤牧場は乳牛を購入せず、自家産で対応する。

残念なことに、アイスクリームも牛乳も消費量は減る一方だ。「提携酪農家が生活を成り立たせ、酪農の将来を描けるようにするためには、食べる側が強い意思を持って、未来へつながる『食』を選択することが必要です」と新生酪農千葉工場品質管理部の岩瀬尚哉さん。それは、生産者と共同で建設した牛乳工場で、こうありたいと願いながらつくってきた「食」の姿だ。


新生酪農千葉工場品質管理部の岩瀬尚哉さん

撮影/魚本勝之 文/本紙・伊澤小枝子

みんな同じ、72度15秒間殺菌



新生酪農の牛乳工場は、千葉県睦沢町、栃木県那須塩原市、長野県安曇野市の3カ所にある。それぞれの地域では、酪農家が農事組合法人新生酪農クラブ、箒根(ほうきね)酪農業協同組合、南信酪農業協同組合を組織し、生活クラブの乳製品の原料乳を生産している。 

栃木工場ではパスチャライズド牛乳900ミリリットル、千葉工場では200ミリリットルのパスチャライズド牛乳と低脂肪牛乳や、バター、アイスクリーム、ヨーグルトなどを製造する。安曇野工場ではノンホモ牛乳とパスチャライズド牛乳900ミリリットル、ミルクティーやコーヒーミルクなどの乳飲料が製造され、全国の組合員に届けられる。

200ミリリットルのびん入りパスチャライズド牛乳は、2006年より千葉工場がある睦沢町や、周辺の茂原市などの幼稚園、小学校、中学校の給食に取り入れられている。72度15秒間殺菌で、成長期の子どもたちに必要なカルシウムやタンパク質が吸収されやすい形で含まれる飲みやすい牛乳だ。牛乳ぎらいだったがよく飲むようになった子もいるそうだ。

ノンホモ牛乳は、生乳を72度15秒間殺菌しただけで、生乳に含まれる脂肪球を細かくして均質化する処理(ホモジナイズ処理)をしないパスチャライズド牛乳。日本の牛乳のほとんどは130度2秒間殺菌の超高温殺菌で作られる。殺菌効率を上げ焦げ付きを避けるために、必ず殺菌する前にホモジナイズ処理がされる。そのため、一般ではノンホモ牛乳が見られない。

ノンホモ牛乳をしばらく静置するとクリームが浮いてくる。コーヒーや紅茶のミルクとして、また菓子の材料として使え、バターやモッツァレラチーズ作りに挑戦するなど楽しめる牛乳だ。

低脂肪牛乳もパスチャライズド牛乳の原料と同じ生乳から作られる。生乳から脂肪分を分離して乳脂肪を1.4%に調整した後、72度15秒間殺菌した牛乳だ。カルシウムやタンパク質、ミネラルなどはそのまま残っている。分離した脂肪は、同じ工場で「新生酪農の牛乳でつくったバター」に加工される。

スーパーなどでも「低脂肪牛乳」、「低脂肪乳」、乳飲料の「低脂肪」などが売られている。「低脂肪乳」は生乳に脱脂粉乳やクリーム、水などを加えて作った加工乳。「低脂肪」は、生乳の脂肪分をほとんど除去し乳固形分を3%以上に整えたもの。この二つは原料が生乳100%ではないので牛乳とはいえない。

また、市販の低脂肪牛乳はおいしくないという人が多い。新生酪農千葉工場品質管理部の岩瀬尚哉さんによると、「牛乳に含まれる脂肪は、他の成分の味をやわらげる役割があります。超高温殺菌の牛乳から脂肪を取ってしまうと。焦げたタンパク質の味がストレートに感じられてしまいおいしくないのです」ということだ。パスチャライズド牛乳は、もともと焦げ臭はついていない。生活クラブの低脂肪牛乳は、むしろ脂肪が少なくなくなったことで乳糖のほんのりした甘さがさらに感じられるようになる。脂肪分が60%カットされた、やさしい味わいの牛乳だ。


低脂肪牛乳、ヨーグルトなどを飯能デリバリーセンターに運ぶ10トントラック

撮影/魚本勝之 文/本紙・伊澤小枝子

『生活と自治』2018年7月号の記事を転載しました。

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