梅の生産者から広がった 地域の産業を未来につなげる取組み
紀伊半島で梅や柿を栽培する有限会社王隠堂農園(以下、王隠堂農園)は、生活クラブとの提携の歴史が長く、関係の深い生産者のひとつです。近年は、気候危機や人材不足に直面しながらも、地域の産業を未来につなぐ活動をしています。どのような取組みなのか、一緒に見ていきましょう。
農薬に頼らない栽培から始まった生活クラブとの提携の歴史
王隠堂農園はおよそ700年前から、奈良で梅栽培を生業としてきました。農薬の使用に疑問を抱き農薬に頼らない栽培に取り組んでいた王隠堂農園が、生活クラブとの提携を始めたのは1977年のこと。最初の消費材は「梅ぼし」でした。以来、安定して届けられるよう、生活クラブ独自の基準に沿った果実栽培を紀伊半島地域の生産者に呼びかけ、協力体制を整えてきました。しかしながら、この地域では人口の減少や生産者の高齢化、山あいでのきびしい労働環境も影響した後継者の不足といった課題を抱えています。
落として梅を傷つけないよう、ひとつずつ人の手でもぎ、丁寧に収穫しています。
持続可能な農業を見据えた新たなチャレンジ
王隠堂農園では、高齢化による労働力不足の解消と農業の効率化を図るため、ロボットなどを活用したスマート農業※の試みを実施。作業負担の軽減につながることから、新規就農への期待も寄せられています。また、「農業を誰もが参加できる場にしたい」という想いから、障害をもった人の就農支援を行なう(株)パンドラファームグループを1996年に設立。以降、障害をもった人たちを積極的に雇用しています。
さらに、近年は気候変動による農業への影響が深刻になってきていることを踏まえ、生産リスクの低い場所を探し、新たな梅畑の開拓にも注力。1997年に三重県御浜町につくった圃場は現在14ha(東京ドーム約3個分)に及び、そこで栽培された梅は生活クラブにも届けられています。
※:ICT(情報通信技術)を活用した農林水産省の助成事業「中山間地域の高齢化・離農に対するスマートシェアリング産地支援スキームの構築実証」
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【2030行動宣言コラム】重要目標4:地域の産業を未来につなぐため新たな技術を取り入れ気候危機に立ち向かう
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リモコン式草刈り機は、傾斜地の多い圃場での作業負担を減らし、事故を防ぐことにもつながると期待されています。
人とのつながりを大切にしながら未来につながる産地づくりへ
「先人から受け継いだこの地域を次世代につないでいきたい」という王隠堂農園の強い想いは、他の生産者にも伝播し大きな広がりを見せています。当農園が呼びかけ、2017年に生活クラブを含む13団体で発足した「紀伊半島地域協議会」、2018年にみかんの生産者とともに設立した「(株)紀伊半島エリア再生産組織( KARP)」は具現化の一例で、ともに高齢化や後継者不足などの課題に取り組み、持続可能な産地づくりをめざしています。人とのつながりを大切にしながら、地域全体の幸せのために。組合員の手元に届く梅などの消費材には、生産者たちの「これからもつくり続けていきたい」という想いがこめられています。
梅ぼしづくりにかかせない天日干しの工程。表も裏も太陽の光で乾かすことで、梅本来の旨みを引き出しています。
高齢化や後継者不足の問題、若者の果物離れによる果樹消費量の減少といった課題をともに解決するため、果樹栽培に従事する4つの生産者が発足。
みかんなどの主力生産物の産地基盤をつくり、農業を中心とした町づくりをめざしています。
食べて産地を応援!王隠堂農園の梅加工品
梅ぼし420g
有機質肥料で育てた梅を消費材の真塩で漬け、天日で干してから、しそ漬けする昔ながらの製法。保存料は不使用です。
梅ドリンク
生の青梅を砂糖で漬け込み、蜂蜜をブレンドした濃縮タイプ。クエン酸も添加しないさっぱりした風味です。
社会の存続をおびやかす危機への対策をすすめ、持続可能な地域・社会づくりに取り組みます
生活クラブでは、組合員と提携生産者たちが力を合わせ、資源や人材を提供しあいながら、持続可能な産地づくりをめざしています。
生活クラブでは、組合員と提携生産者たちが力を合わせ、資源や人材を提供しあいながら、持続可能な産地づくりをめざしています。
★生活クラブ食べるカタログ 2023年6月4回(26週)より転載しました。
【2023年6月12日掲載】