組合員による再生可能エネルギー現場レポート:デンマーク・サムソ島 1%だった再生可能エネルギーを100%にした島
コペンハーゲンの一風景。左奥の傾斜のついた建物はごみ焼却・発電施設と公園の複合施設「CopenHill」。
サムソ島の11基の洋上風車。
“原発のない社会をつくる” という意思をもって、エネルギーの自給自足を目的にできた「生活クラブでんき」。組合員が “自分たちの電力会社を持っている” ということは、エネルギー自給の実現に向け、一つの道具をすでに手にしている。電力の自由化から7年、もっと再エネを広げるには「生活クラブでんき」の拡大と、再エネが身近な社会の姿を市民自ら描くことが必要だ。そのヒントを探りに、2023年9月、生活クラブ組合員ら20人で脱原発を果たしたデンマークのサムソ島を訪ねた。
※このレポートは多摩きた生活クラブ理事 岡田やよいさんと生活クラブ東京専務理事 金丸正樹さんの視察報告を再構成しました。
※このレポートは多摩きた生活クラブ理事 岡田やよいさんと生活クラブ東京専務理事 金丸正樹さんの視察報告を再構成しました。
再生可能エネルギ一の自給自足をめざして
コペンハーゲンからバスとフェリーを乗り継いで、サムソ島へ。出港して1時間ほどで島が見えてくる。海上にはきれいな虹と10基の洋上風力が迎えてくれた。バスで移動する車窓からは、素敵な街並みと、島内に建てられた陸上風力や太陽光パネルが目に飛び込んでくる。
サムソ島は1996年にデンマーク政府が策定した「エネルギー21」という画期的な目標(地球過熱化対策や将来の化石燃料不足といった観点から化石燃料利用を減少させ省エネと再エネの利用をすすめる)により、100%自然エネルギーによる自給自足に取り組み、2006年に達成した。島民自らが計画を立案し、行政主導ではなく自分たちで計画を進めて、100%再生可能エネルギーの島になることを選んだのだ。プロジェクトの中心人物であるソーレン・ハーマンセンは、島の中学校で環境学を教えていた元教師。プロジェクトを進めるうえで、島民と何度も何度も話しあいを行なったという。小さな場所で、時にはコーヒーとクッキーとともに、住民が参加しやすく、オープンに話しあうことで、今までにない意見やアイデアがうまれた。
サムソ島は1996年にデンマーク政府が策定した「エネルギー21」という画期的な目標(地球過熱化対策や将来の化石燃料不足といった観点から化石燃料利用を減少させ省エネと再エネの利用をすすめる)により、100%自然エネルギーによる自給自足に取り組み、2006年に達成した。島民自らが計画を立案し、行政主導ではなく自分たちで計画を進めて、100%再生可能エネルギーの島になることを選んだのだ。プロジェクトの中心人物であるソーレン・ハーマンセンは、島の中学校で環境学を教えていた元教師。プロジェクトを進めるうえで、島民と何度も何度も話しあいを行なったという。小さな場所で、時にはコーヒーとクッキーとともに、住民が参加しやすく、オープンに話しあうことで、今までにない意見やアイデアがうまれた。
コミュニティをどう巻き込んでいくか
プロジェクトは、島民にとって「Why=なぜ」に着目することから始まった。そうして出た着眼点は、人口の減少、農家の担い手不足など、地域の問題点を解決するため。そして、若い世代がこのアクションを魅力的に感じ、循環型の経済が成り立つようにすること。次に「(How=どのように」解決するか。再エネで生まれるお金を地域で循環させ、その後は「What=なに」どんな新しい仕事が創出できるのか。島民や住宅が増えるためは何が必要か。このような順序で話し合いを進め、実行することで再生可能エネルギー100%を実現していった。地域コミュニティ全体で対話をしながら、島民たちが共同所有していくというローカルな行動を大事にチャレンジしていく。これは「生活クラブ」の運営姿勢にも重なることで、まさに「ロ ーカルSDGs」を体現していると共感した。
バイオマス燃料として使われる麦わら。
太陽集熱フィールド。太陽の熱エネルギーを活用するしくみで発電よりエネルギー効率が高い。
自分たちに必要なことのために行動する
現在サムソ島では4つの「地域熱供給プラント」で島内の75%のエネルギーをカバーしている。地域熱供給とは、暖房や給湯のためのお湯を地域にあるプラントでつくり、パイプを通して各家庭などに供給すること。
近所の畑から購入した麦わらを燃やしたバイオマスや、太陽熱温水器などでお湯を沸かす。麦わらの塊はひとつ約600キロあり、それは200リットルほどの石油と同じくらいのエネルギーになるという。一つの地域熱供給プラントで、350戸の家庭にお湯を供給している。かつ、その家庭がプラントのオーナーでもあるため、利益も得ながら、各家庭が支払う料金は、石油でお湯を沸かすよりも20%くらい安く済んでいるという。
畑の中に立つ風車は、島民が風車建設の計画を立て、島民450人で1基の風車に出資して建てたもの(島の人口は約3,700人)。洋上風力発電では古くなった風車を買取会社に売り、その利益で新しい風車を建てるという資金の循環ができているという。これらの風力発電によって、島内で消費される電力以上の発電ができており、また、島に輸入していた化石燃料をストップしたことで、地域に資金のストックができて、CO2の排出量はマイナスになっている。
島民たちが “自分たちに必要なことは何か” と意見を出しあい、オープンに話しあいながら実践していった行動力。それをもって島民が主体となり1%だった再生可能エネルギーを100%にまでできたと知り、生活クラブ組合員の活動にも可能性があることを感じながら島を後にした。
近所の畑から購入した麦わらを燃やしたバイオマスや、太陽熱温水器などでお湯を沸かす。麦わらの塊はひとつ約600キロあり、それは200リットルほどの石油と同じくらいのエネルギーになるという。一つの地域熱供給プラントで、350戸の家庭にお湯を供給している。かつ、その家庭がプラントのオーナーでもあるため、利益も得ながら、各家庭が支払う料金は、石油でお湯を沸かすよりも20%くらい安く済んでいるという。
畑の中に立つ風車は、島民が風車建設の計画を立て、島民450人で1基の風車に出資して建てたもの(島の人口は約3,700人)。洋上風力発電では古くなった風車を買取会社に売り、その利益で新しい風車を建てるという資金の循環ができているという。これらの風力発電によって、島内で消費される電力以上の発電ができており、また、島に輸入していた化石燃料をストップしたことで、地域に資金のストックができて、CO2の排出量はマイナスになっている。
島民たちが “自分たちに必要なことは何か” と意見を出しあい、オープンに話しあいながら実践していった行動力。それをもって島民が主体となり1%だった再生可能エネルギーを100%にまでできたと知り、生活クラブ組合員の活動にも可能性があることを感じながら島を後にした。
ソーレン・ハーマセンさん。研究・教育機関サムソ・エネルギー・アカデミーで持続可能なエネルギーの実践に取り組む。
地域熱供給施設。地域で使用する熱(暖房や温水など)をまとめてつくり、供給する。
太陽熱を取り込む太陽集熱フィールドには羊が放たれている。草をはむことでフィールド維持に一役買っている。
デンマークの伝統的な茅葺き屋根の建物。 再エネの先端をゆくこの島では、今なお伝統が息づき、人々は穏やかに暮らす。
港で記念撮影!視察ツアーは組合員・職員のほか、再エネ研究者や専門家も交えて催行され、深い学びが得られた。
【2024年5月27日掲載】