種をまき続け、地域に根差す 生活クラブ生協山梨【前編】
【連載】みんなで広げる たすけあい
生活クラブグループの生協や関連団体では、福祉・たすけあいの活動や事業が各地でとても豊かに展開され、さらに広がりをみせています。これらの取組みを紹介します。
豊かな自然が魅力の山梨県。近年は多くの移住者もやってきます。県内ではさまざまな人々がさまざまな活動をしています。そのような中で、生活クラブ山梨は地域に根差していくため、自ら地域に入りこみ積極的につながりをつくる種をまき続けています。矢崎綾子さん(生活クラブ山梨・理事長)と、矢崎佳助さん(生活クラブ山梨・甲府センター長)にお話を伺いました。
【前編】地域とつながるからできること
「生活クラブ山梨がめざす暮らしやすい地域づくりは、組合員の活動だけでは限界があります」と矢崎綾子さんは話します。
矢崎理事長
地域には多くの課題がさまざまにある中で、ひとつの生協が単独で解決をめざすということは、確かに難しいことです。その限界を超えるためには、どうすればよいのでしょうか。
「生活クラブ山梨が資金を助成することで、さまざまな地域課題に取り組んでいる人たちとつながり、たすけあいの輪を広げることができると考えました。」(矢崎綾子さん)
それが「みんなのたねまき基金」です。賛同した組合員が「たねをまく人」となる(=基金の原資を拠出する)ことで、地域のたすけあいの取組みに水をやり、芽を育てて、豊かな地域づくりを進めるというわけです。
みんなのたねまき基金
2018年に創設し、現在までにさまざまな団体に助成しています。2021年度は、7団体に合計1,026,850円もの助成をすることができました。助成金の使途はたとえば次のようなものです。
●経済的な理由で学びに格差が生れる子どもを支援する「子ども・教育・貧困問題を考える会」は、子どもたちの進級祝いなどのイベントを開催。
●古民家をリノベーションして子どもの居場所を開設した「NPO法人WakuWakuの家」は、ボードゲームなどのおもちゃを購入。
●都会からの移住者が地域の人とつながる場をつくる「油屋に集まれ!」は、みんなで使えるキッチンを改修。
●「山梨の自然に学び、遊ぶ」をモットーに野外保育や環境教育を行う「NPO法人きらきら星」は、親子で生の音楽演奏にふれる企画などを開催。
2022年度は7団体、2023年度は8団体に助成をしました。
いずれの団体も潤沢な資金を持ってはいませんでした。団体だけではできなかったこと、生活クラブ山梨だけではできなかったこと。それがここでは実現しているのです。
基金を支えているのは、「たねをまく人」(賛同した組合員)による毎月100円の拠出金と、年1~2回のカンパです。「たねをまく人」は2024年6月末で838人となりました。開始から6年で組合員の2割にも達し、今でも少しずつ増え続けています。
「新規加入者には、職員や配送を担うワーカーズ・コレクティブ*のメンバーが声かけすることで、賛同を増やしています。今後は既存の組合員にも積極的にアピールする働きかけをすすめていきたいと考えています。みんなが参加する活動にしていきたいです」と、矢崎佳助さんは話します。
*働く人の協同組合。働く人全員が出資し、経営に責任をもち、労働を分担します。
矢崎センター長
「助成は地域で活動しているさまざまな団体を知るとてもいい機会です。団体と生活クラブとがつながることで、地域共生社会を実現していきたいと考えています。団体どうしがつながることで、新しい地域福祉の芽が育つ希望もあります」。矢崎綾子さんはたねまき基金の今後に胸を膨らませています。
生活クラブ山梨の「たねまき基金」。団体と生活クラブ山梨とが互いを補い合う、とてもすばらしいしくみです。そして、生活クラブ山梨の「種まき」はこれにとどまらないのです。
【2024年10月8日掲載】