生活クラブで学んだこと+地域の力=「ふじえだ元気大賞」
NPO法人W.Coまつぼっくり(静岡県)【後編】
【連載】みんなで広げる たすけあい
生活クラブグループの生協や関連団体では、福祉・たすけあいの活動や事業が各地でとても豊かに展開され、さらに広がりをみせています。これらの取組みを紹介します。
生活クラブで学んだことを活かして、地域で実践してみる。その活動に多くの地域住民が参加して、ついには行政から賞を受けるまでになる。そんなすばらしい活動が静岡県藤枝市にあります。
【後編】地域の力があってこそ
生活クラブでの経験を活かし、仲間たちと「こども食堂まつぼっくり」を始めた前田さん。開始当初について、「地域の人からは『この地域にそんな貧しい人はいない』などとなかなか理解してもらえませんでした。電話で『売名行為』といわれたこともありました」と振り返ります。
支えは、子どもたちと仲間たち
―たしかに、困窮状態におかれているからといって、ひと目でそうだとわかることはあまりないものだと思います。周囲の厳しい声にもかかわらず、ずっと続けてこられたのはなぜですか?
「心が折れそうになった時に支えになったのは仲間たち。そして目の前で食事をおいしそうに食べる子どもたちの存在でした」(前田さん)。
「心が折れそうになった時に支えになったのは仲間たち。そして目の前で食事をおいしそうに食べる子どもたちの存在でした」(前田さん)。

前田さんの心の支えとなっている仲間は、W.Coまつぼっくりのメンバー9人。そして40人以上にもなるボランティアの人たちです。お話を聞いてみました。
「こども食堂を始めた時に出会った赤ちゃんが、今では小学生になっています。子どもたちの成長を見守るのも楽しみです」。
「大学生ですが、休みの日にお手伝いできることがあって、いい経験になっています」。

チラシを配布し続けて
いまでは、おおぜいの人が集う「こども食堂まつぼっくり」ですが、地域にこの活動を知ってもらうために、繰り返し繰り返しチラシを配布したそうです。小学校の校長会ともつながることで、市内の小学校での配布も続けることができました。その効果はあったのでしょうか?
たとえば、こんな事例があります。保育園で配布したチラシは、調理担当者の目に留まりました。その方はその後まつぼっくりの活動へ参加するようになりました。「事故なく、おいしい食事が提供できるよう、衛生管理のお手伝いをしています。今日のシャインマスカットは半分にカットしています」。
たとえば、こんな事例があります。保育園で配布したチラシは、調理担当者の目に留まりました。その方はその後まつぼっくりの活動へ参加するようになりました。「事故なく、おいしい食事が提供できるよう、衛生管理のお手伝いをしています。今日のシャインマスカットは半分にカットしています」。

組合員以外のさまざまな住民も活動に参加し、「自分のできること」を活かす場になっていることが強みです
「ワーカーズコレクティブを名乗っていますが、事業収益は上がらないのでメンバーもボランティアも無償です。交通費くらいは渡したいと思うのですが、『食材購入に充てたい』とみんなが言ってくれます。最初のころはお金がなくてお肉を買えなかったので、参加者アンケートに『肉が食べたい』と書かれましたからね」。前田さんは苦笑混じりにそう振り返ります。
現在は市からの補助金、一般の方からの寄付金や食材などが多く集まるようになり、ようやく活動が安定してきました。
困窮家庭を支援するために
あるとき、アンケートを取ってみると、ひとり親家庭が低所得である実態が見えてきました。
「シングルマザーの家庭の収入は100万円に満たないのです。食材や生理用品などを配布する『天使の贈り物』を始めました」(前田さん)。配布時には、子育て支援や生活支援の情報も合わせて伝えます。
子どもの「体験格差」をなくすために、いちご狩り、みかん収穫、バーベキューもしています。
「こども食堂まつぼっくり」は、第2日曜日には高洲地区交流センター(藤枝市)で、第3土曜日には生涯学習センター(同)でも開催しています。この2カ所では、困窮家庭の人たちが参加しやすいように、お弁当を配布する形式です。
「シングルマザーの家庭の収入は100万円に満たないのです。食材や生理用品などを配布する『天使の贈り物』を始めました」(前田さん)。配布時には、子育て支援や生活支援の情報も合わせて伝えます。
子どもの「体験格差」をなくすために、いちご狩り、みかん収穫、バーベキューもしています。
「こども食堂まつぼっくり」は、第2日曜日には高洲地区交流センター(藤枝市)で、第3土曜日には生涯学習センター(同)でも開催しています。この2カ所では、困窮家庭の人たちが参加しやすいように、お弁当を配布する形式です。
そして自分たちの拠点へ
これまで、公共施設をその都度借りてきたのですが、ついにまつぼっくりの拠点ができます。藤枝市に寄付された建物の2階をこども食堂として、2026年の春から活用できることが決まったのです。
これまでは開催日に制限があるだけでなく、保管していた食材を運ぶ手間もありました。「拠点ができれば、夏休みの朝ごはんを提供するとか、やりたいことがもっと実現できそうです。水道光熱費の負担など新たな課題もありますが、みんなで考えていきます」と、前田さんは次の活動に期待を膨らませています。
これまでは開催日に制限があるだけでなく、保管していた食材を運ぶ手間もありました。「拠点ができれば、夏休みの朝ごはんを提供するとか、やりたいことがもっと実現できそうです。水道光熱費の負担など新たな課題もありますが、みんなで考えていきます」と、前田さんは次の活動に期待を膨らませています。
【2025年2月4日掲載】