三河の老舗が造る調味料 ふくよかな甘みと、華やかな香りを【みりん風醸造調味料】

1872年(明治5年)創業の相生ユニビオは、江戸時代より本みりんの産地として知られる愛知県の西三河地方にある。豊かな食生活と健康な暮らしをと願う老舗が、自社製の清酒と本みりんの良さを併せ持つ「みりん風醸造調味料」を造っている。
「みりん」って?
「一般に『みりん』と言われている調味料は、原材料や製法により3種類に分けられます。ひとつは『本みりん』、それから『みりん風調味料』と『発酵調味料』です」と、みりん風醸造調味料の提携生産者、相生ユニビオの生産部長、宇野浩幸さんが言う。
本みりんは蒸したもち米と米麹、焼酎を原料にもろみを造り、こして熟成させたもの。14%前後のアルコール分を含む。
みりん風調味料は、水あめ(糖類)、米・米麹の醸造調味料、香料や酸味料をブレンドしたもので、アルコール分はほとんど含まない。発酵調味料は、加塩清酒と水あめが主原料だ。アルコール分を10%前後含むが、原料の清酒に食塩を加え酒として飲めないようにしているため、酒税法の対象にはならない。
焼酎の中で、米麹がもち米のでんぷんをゆっくりと分解して糖をつくる本みりんは、ふくよかな甘みを持つ。江戸時代には、庶民の間で甘い酒として親しまれていたが、現在は料理の隠し味として使われることが多い。含まれるアルコール分は魚や肉の臭みを消すマスキング効果を持つ。独特の甘みは料理にうま味とコクを与え、煮崩れを防いだり照りを出したりする働きもある。煮物やそばつゆなど日本料理を供する料亭や割烹旅館の料理人にとって欠かせない調味料だ。
一般家庭で広くみりんが使われるようになったのは、1950年代頃から。本みりんは製造に手間や時間がかかり普段の料理に使うには高価なため、みりん風調味料や発酵調味料が大量に生産され、安価に販売されるようになった。
生活クラブの消費材として生産されるみりん風醸造調味料は、発酵調味料に含まれる。加塩清酒と水あめに、6%弱の割合で本みりんが配合され、清酒の華やかな香りと本みりんの上品でふくよかな甘みを併せ持つ。みそやしょうゆなどの調味料と相性が良く、素材の味を十分に引き立てる発酵調味料だ。
本みりんは蒸したもち米と米麹、焼酎を原料にもろみを造り、こして熟成させたもの。14%前後のアルコール分を含む。
みりん風調味料は、水あめ(糖類)、米・米麹の醸造調味料、香料や酸味料をブレンドしたもので、アルコール分はほとんど含まない。発酵調味料は、加塩清酒と水あめが主原料だ。アルコール分を10%前後含むが、原料の清酒に食塩を加え酒として飲めないようにしているため、酒税法の対象にはならない。
焼酎の中で、米麹がもち米のでんぷんをゆっくりと分解して糖をつくる本みりんは、ふくよかな甘みを持つ。江戸時代には、庶民の間で甘い酒として親しまれていたが、現在は料理の隠し味として使われることが多い。含まれるアルコール分は魚や肉の臭みを消すマスキング効果を持つ。独特の甘みは料理にうま味とコクを与え、煮崩れを防いだり照りを出したりする働きもある。煮物やそばつゆなど日本料理を供する料亭や割烹旅館の料理人にとって欠かせない調味料だ。
一般家庭で広くみりんが使われるようになったのは、1950年代頃から。本みりんは製造に手間や時間がかかり普段の料理に使うには高価なため、みりん風調味料や発酵調味料が大量に生産され、安価に販売されるようになった。
生活クラブの消費材として生産されるみりん風醸造調味料は、発酵調味料に含まれる。加塩清酒と水あめに、6%弱の割合で本みりんが配合され、清酒の華やかな香りと本みりんの上品でふくよかな甘みを併せ持つ。みそやしょうゆなどの調味料と相性が良く、素材の味を十分に引き立てる発酵調味料だ。

三河で造る本みりん

もろみを、液体の本みりんとみりんかすに分ける機械。みりんかすは「こぼれ梅」と言われ、甘いのでそのまま食べたり、漬物の材料にも使う
愛知県の三河地方で本みりんが造られ始めたのは江戸時代半ばだ。当時発達していた回船で江戸へ運ばれ、うなぎ屋やそば屋が使い品質の良さが評判となり、「三河みりん」として重宝されるようになった。
相生ユニビオの創業は1872年(明治5年)。前身の相生味淋が同県碧南市で本みりんの製造を始めた。碧南市は三河湾に面し、温暖で発酵に適した気候風土にある。矢作川が流れ、原材料や製品を運ぶ水運にも恵まれており、みそ、しょうゆ、酒、本みりんなどの醸造業が発達した地だ。
相生味淋は、創業時より江戸時代から伝わる醸造方法で本みりんを造り、さらに清酒やウイスキーの製造も手がけてきた。昭和の中頃、碧南市の隣の西尾市に移り、2004年、相生ユニビオが誕生する。社内では、当時の取締役社長、村松浩一郎さんの、「食品は食生活や心身の健康に貢献するものでなければならない」との思いが共有されている。特に調味料は毎日少しずつ体に取り込むものであり、医薬品以上に気にかけるべき食べものとして、安全性が疑われる原料や製法は避けるようにと心がけてきた。
相生ユニビオの創業は1872年(明治5年)。前身の相生味淋が同県碧南市で本みりんの製造を始めた。碧南市は三河湾に面し、温暖で発酵に適した気候風土にある。矢作川が流れ、原材料や製品を運ぶ水運にも恵まれており、みそ、しょうゆ、酒、本みりんなどの醸造業が発達した地だ。
相生味淋は、創業時より江戸時代から伝わる醸造方法で本みりんを造り、さらに清酒やウイスキーの製造も手がけてきた。昭和の中頃、碧南市の隣の西尾市に移り、2004年、相生ユニビオが誕生する。社内では、当時の取締役社長、村松浩一郎さんの、「食品は食生活や心身の健康に貢献するものでなければならない」との思いが共有されている。特に調味料は毎日少しずつ体に取り込むものであり、医薬品以上に気にかけるべき食べものとして、安全性が疑われる原料や製法は避けるようにと心がけてきた。

蒸したもち米と米麹、焼酎を材料に、もろみを仕込むタンク

みりん風醸造調味料の容器は、基本的にリユースびん

リユースびんを一度洗浄機にかけてから、みりん風醸造調味料を充填(じゅうてん)する

目視で検品をして異物混入を防ぐ。ラベルの賞味期限表示の確認も行う
GM対策が結んだ縁
相生ユニビオ(当時・相生味淋)の生活クラブとの出会いは1998年。トウモロコシや大豆、ナタネなどの作物に遺伝子組み換え(GM)技術が使われ、生態系への影響が懸念されていた頃だ。生活クラブは97年に「遺伝子組み換え作物・食品に対する基本的態度」を決定し、原則不使用を確認し、消費材のGM対策を進めていた。
一方、相生ユニビオは、安全性に少しでも疑問が残る原材料は使わない、との考えのもとに、発酵調味料の主原料の一つである水あめの原料を、トウモロコシからGMの心配のない甘藷(サツマイモ)へと切り替えた。このGM対策済みの製品の案内を全国のスーパーや生協に出したところ、問い合わせがあったのは生活クラブだけだったそうだ。
当時、生活クラブは、77年に開発したみりん風醸造調味料のGM対策を済ませていたが、提携生産者が供給できなくなり、新たな生産者を探していたところだった。相生ユニビオは、生活クラブと食に対する考え方などを話し合ったうえで、提携を開始、自社製の加塩清酒とGM対策済みの水あめを主原料とするみりん風醸造調味料の製造を始めた。
ところが、提携した2001年、国内でBSE(牛海綿状脳症)感染牛が発生する。清酒や本みりんを製造する時に、未分解のたんぱく質やでんぷんを分離沈殿させる「滓下げ」という工程がある。この工程で相生ユニビオは、加工助剤として牛由来のゼラチンを使っていた。「加工助剤は最終的に製品には残らないので問題はありませんが、消費者の方たちの不安を解消するために代替品を探しました」と、当時対応に当たった宇野さんが振り返る。ゼラチンはアレルゲン表示の対象でもあったので、魚由来のコラーゲン使用を決めた。そこには、アレルギーを持つ人も安心して口にできる食品を、という思いがあった。
その後みりん風醸造調味料は、組合員の要望により、自社製の本みりんを3%ブレンド、09年には6%弱まで増やした。同時に、本みりんの原料の米麹を造る米は、生活クラブの共同開発米の提携生産者、JA加美よつば産に変えた。合わせるもち米は九州産、焼酎は自社製の焼酎乙類を使用している。
一方、相生ユニビオは、安全性に少しでも疑問が残る原材料は使わない、との考えのもとに、発酵調味料の主原料の一つである水あめの原料を、トウモロコシからGMの心配のない甘藷(サツマイモ)へと切り替えた。このGM対策済みの製品の案内を全国のスーパーや生協に出したところ、問い合わせがあったのは生活クラブだけだったそうだ。
当時、生活クラブは、77年に開発したみりん風醸造調味料のGM対策を済ませていたが、提携生産者が供給できなくなり、新たな生産者を探していたところだった。相生ユニビオは、生活クラブと食に対する考え方などを話し合ったうえで、提携を開始、自社製の加塩清酒とGM対策済みの水あめを主原料とするみりん風醸造調味料の製造を始めた。
ところが、提携した2001年、国内でBSE(牛海綿状脳症)感染牛が発生する。清酒や本みりんを製造する時に、未分解のたんぱく質やでんぷんを分離沈殿させる「滓下げ」という工程がある。この工程で相生ユニビオは、加工助剤として牛由来のゼラチンを使っていた。「加工助剤は最終的に製品には残らないので問題はありませんが、消費者の方たちの不安を解消するために代替品を探しました」と、当時対応に当たった宇野さんが振り返る。ゼラチンはアレルゲン表示の対象でもあったので、魚由来のコラーゲン使用を決めた。そこには、アレルギーを持つ人も安心して口にできる食品を、という思いがあった。
その後みりん風醸造調味料は、組合員の要望により、自社製の本みりんを3%ブレンド、09年には6%弱まで増やした。同時に、本みりんの原料の米麹を造る米は、生活クラブの共同開発米の提携生産者、JA加美よつば産に変えた。合わせるもち米は九州産、焼酎は自社製の焼酎乙類を使用している。
変わる環境、変わらない想い

2020年より工場を新築し始め、設備も新しく整えている
20年より、相生ユニビオでは工場を建て替え、設備の新設を進めている。新工場では、麹やもろみの製造、熟成などの、温度や時間の管理が自動的に行われる。以前はもろみを仕込む時期は、米の収穫が終わり微生物による汚染のリスクが低くなる晩秋以降が多かった。
みりん製造に携わる、生産部、西尾事業所マネージャーの髙橋克彦さんは三河出身だ。「本みりんは自分の周りに当たり前にあるものです。400年以上も造り続けられ使われているところに価値があります。それが魅力なのだと思います。自分たちはそんな本みりんを受け継いでいるのです」。時代とともに環境や設備は変わっていくが、ものづくりに対する想いは変わらない。
宇野さんは、「みりん風醸造調味料を使うとともに、江戸時代から変わらない製法で造られている本みりんも試してみてください」と、すすめる。料理に奥深い味をもたらす調味料が、三河で受け継がれる醸造の技術や食文化を伝えている。
みりん製造に携わる、生産部、西尾事業所マネージャーの髙橋克彦さんは三河出身だ。「本みりんは自分の周りに当たり前にあるものです。400年以上も造り続けられ使われているところに価値があります。それが魅力なのだと思います。自分たちはそんな本みりんを受け継いでいるのです」。時代とともに環境や設備は変わっていくが、ものづくりに対する想いは変わらない。
宇野さんは、「みりん風醸造調味料を使うとともに、江戸時代から変わらない製法で造られている本みりんも試してみてください」と、すすめる。料理に奥深い味をもたらす調味料が、三河で受け継がれる醸造の技術や食文化を伝えている。

生産部長の宇野浩幸さん

生産部西尾事業所マネージャーの髙橋克彦さん
撮影/田嶋雅已
文/伊澤小枝子
文/伊澤小枝子
『生活と自治』2025年3月号「連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
【2025年3月20日掲載】