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生協の食材宅配【生活クラブ】
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良質な土と減農薬で育む 最高の甘み、うまみ、香り【はればれ育ち長ねぎ、他】

収穫まで間もなくの「はればれ育ち」の長ねぎ。この見事な根っこで養分を吸収し、味が乗る。小さな団子状の塊からなる団粒構造の土は、保水力と水はけに優れている(本文参照)
 
宮城県仙台市から北へ約40キロの地点に広がる大崎平野。その西端に位置する加美(かみ)郡一帯に、どこまでも田畑の景色が続いている。提携先のJA加美よつばは、この地で米や野菜などの作物を作ってきた。7月上旬、長ねぎの畑を訪れると、青々とした葉が、天を目指して力強く伸びていた。だが、東北の地にも、温暖化の波が押し寄せている。それでも生産者たちは、安全でおいしい長ねぎを届けるために手を尽くす。

生産者を悩ます気候変動

美しい長ねぎ畑で。左からJA加美よつば営農販売部園芸課・課長の三浦たか志さん、長ねぎの生産者・星昭汰さん、星進太郎さん、JA加美よつば営農販売部園芸課・チーフの鈴木一希さん

美しく整備された畝に、見事な長ねぎがずらりと並び、まるで「収穫はもうすぐだよ」とささやいているようだ。だが、問題は暑さだ。この日は、午前中から30度を超え、太陽が容赦なく大地を照りつける。JA加美よつば営農販売部園芸課・課長の三浦たか志さんが、滴る汗をぬぐいながら現状を教えてくれた。
「この時期、気温が20~25度くらいだと、収穫に向けて長ねぎはぐんぐん伸びるのですが、ここまで暑いと生育への影響が心配です」

この畑で長ねぎを作る星進太郎さんも、太陽を見上げながら、これまでの苦労を振り返る。
「苗を植えた3月は、気温が低すぎて生育が遅れたのですが、今度はこの暑さですよ。おまけに雨量も少ないんです」

急激な気温の変化や雨量の増減が、長ねぎの生育に悪影響を及ぼす。この状況はJA加美よつばに限らない。事実、全国各地の提携産地で長ねぎの生育不良が懸念され、その対策を協議する会議の開催が決まっているという。

だが、こうした状況でも星さんは、前を向く。試行錯誤を繰り返して育てた長ねぎの味に、絶対の自信があるからだ。
「とにかく一度、食べてみてほしいですね。甘み、うまみ、香りの違いを感じていただけるはずです」

重さと香りでわかるねぎの出来

減農薬栽培では雑草が生えやすい。星さん親子は早朝4時から7時ごろまで、こうして雑草を抜いて回る
 
星さんが作るのは、生活クラブの独自規格「はればれ育ち」の長ねぎだ。生産者と生活クラブ連合会が、栽培期間中の化学合成農薬や化学肥料の使用量を協議し、できるだけ減らそうと制定した独自の基準で栽培されている。特に水質汚染、発がん性、ダイオキシン含有などの懸念がある農薬は、「削減指定農薬」と定め、使用していない。さらにJA加美よつばでは、宮城県の慣行栽培基準の農薬使用回数である19成分回数の半分以下、9成分回数と独自の基準を定め、長ねぎを栽培している(※1)

「近年の異常気象の中で、農産物を栽培するにあたり農薬は必要不可欠ではあるものの、使うとやっぱり苦みが出たり、食感が硬くなったりするように感じます。安全性はもちろん、味にも影響しますから、極力農薬は使わないようにしています」と星さんが言う通り、JA加美よつばの生産者たちは、より一層の減農薬に努め、昨年度の農薬使用実績は、9成分回数の基準をさらに下回る6成分回数だった。

農薬や化学肥料に頼らずとも、病気を防ぎ、長ねぎをしっかり育てるには、土作りが欠かせない。土壌中の微生物が有機物を分解する際に出す分泌物などの作用で、土はたくさんの小さな団子状の塊になる。こうしてできる団粒構造が、土の保水力を高め、少ない雨でも十分な養分を作物に供給してくれる。逆に雨が多いときは、水はけのよさを発揮し、病気にかかりにくくする。星さんは、試行錯誤のうえ、さまざまな有機肥料を掛け合わせて、団粒構造の土を作っているが、考え方は、人間の食事と同じだと言う。
「ご飯しか食べない人と副菜もたくさん食べる人では、栄養状態が違うでしょう。それと同じで、土にもいろいろな有機肥料を与えて大地を豊かにするイメージです。すると土の微生物の活動も活発になり、団粒構造もできやすくなります」

土作りの成果は、根っこに現れる。星さんの長ねぎの根っこは、地中から飛び出してしまうほど、根量が多く、そして長く発達している。この見事な根っこが養分をたっぷり吸収して、甘み、うまみ、香りがぐんと乗る。

「よく育った長ねぎは、身が詰まって、水分も豊富だから、重いんです。持ってみるとわかりますよ」
そう言って、星さんが長ねぎを抜いて持たせてくれた。収穫前にもかかわらず、ねぎは、ぱんぱんに張り、ずしりと重い。根や葉を切り落とすと、すぐに水分がしたたり落ちる。切り口に鼻を近づければ、ねぎのさわやかな香りがする。
「これでもまだまだ」と星さんは言う。「これからもっと味が乗ってきますから」

※1 成分回数:農薬をまいた回数ではなく、使用した農薬の種類の数を示す単位。たとえば、9成分回数は、9成分(種類)の農薬を使用したということ。
長ねぎ作りに欠かせない土寄せの作業。機械を使って土をかぶせた部分には、日光が当たらなくなるので、長ねぎ特有の軟白(なんぱく)部分(白くて柔らかい部分)ができる
 
土寄せでは、葉が茎とわかれているところまで土をかぶせる。星さんが掘って埋まっていた部分を見せてくれた。親指のところまで土がかぶっていて、それより下の部分が白くなっていく
 
葉を切り落とすと、すぐに水分があふれ出す

香りは、長ねぎのおいしさの重要な要素

3月の寒さで生育が遅れた今年、夏どりの長ねぎの収穫は半月遅れの7月中旬から9月下旬ごろまで。稲刈り作業を挟み10月中旬から12月中旬までは、秋冬どりの長ねぎの収穫を予定している(※2)

※2  「はればれ育ち」の長ねぎの産地は、複数あります。産地を指定しての注文はできません。

濃密な人間関係が生む希望

JA加美よつばは、1999年に、色麻(しかま)、中新田(なかにいだ)、小野田(おのだ)、宮崎の四つの農業協同組合が合併して誕生した。その中の中新田と生活クラブとは70年代から交流があり、85年に正月用のしめ縄飾りを組合員に届けたことをきっかけに提携が始まった。合併後も少しずつ提携は広がり、現在は、主食用米の「まなむすめ」と「ささゆた香」、長ねぎ、玉ねぎから、トマトケチャップの原料となる加工用トマト、ビオサポ食材セット用(※3)のキャベツ、飼料用米まで、さまざまなものを生産している。この提携の拡大を支えたのは、農協と生協の濃密な人間関係に尽きると三浦さんは言う。

「これまで何度、生活クラブさんに足を運んだか、わかりません。直接会って厳しい意見をもらったこともありますが、こちらも伝えたいことを伝えて、少しずつ信頼関係を築いてきたのだと思います。これには長い年月が必要でした。でも、おかげで、生活クラブさんは資材高騰で大変なときに、価格について理解してくれます。消費する側が生産者の現状をおもんぱかってくれる関係性は、これから先の農業を維持していくためにも大事だと感じます。

先日、ある組合員の方がお見えになった際に、『提携産地の現状と生産者のご苦労を消費地に持ち帰り、ただ消費するだけではなく、その価値を広く組合員に伝えたい』と言ってくれました。とてもうれしかったですね」
生産者と消費者が対等な立場で話し合い、それぞれの利益を実現する「対等互恵(たいとうごけい)」の関係を生活クラブは大切にしてきた。その実践がここでは一つの形となっている。

一方で、農協の組合員である個々の生産者と職員の関係も、農業を維持していくうえで重要だ。「生育具合を確認したり、病気の対策を指導したり、講習会を開催したりするのが私の仕事です」と言う営農販売部園芸課・チーフの鈴木一希さんは、こまめに田畑を回って、生産者と本音で対話する時間を大切にしてきた。また、JA加美よつばは、地域で農業機械を共同で利用したり、資材を一括で購入してコストを削減したり、農作業を地域全体で協力し合ったりする「集落営農(しゅうらくえいのう)」の取り組みを通して、生産者同士が助け合う体制を築いてきた。この仕組みが、次世代の育成にもつながっている。

「生産者の高齢化は地域農業を支えるうえで大きな問題のひとつです。しかし、園芸に限っては、この2~3年で、若い生産者が増えていて、実際に稲作、畜産、園芸を手掛ける若手十数人が、年に2回ほど集まって、これからの農業をどうしていくか、話し合っていると聞きました。こうした若手の主体的な動きに期待しています」と、三浦さんはうれしそうだ。
幼いころから長ねぎ作りを手伝ってきた星さんの長男・昭汰さんも、自然と農業に興味を持ち、就農した。現在は父の技術を学びながら、親子ふたりで長ねぎを育てている。星さんにとっては頼もしい後継者だ。

若手の明るい未来のためにも、農協にできることは何か、三浦さんは日々、考え、実践してきた。留め具や接着剤を使わずに組立・分解ができるダンボール箱を導入して出荷元や出荷先の作業を軽減し、金属製のコンテナをリースすることで、玉ねぎの輸送コストの大幅な削減にも成功した。長ねぎの課題は、暑さの影響を受ける収穫後の鮮度保持だが、対策として冷蔵庫の導入を検討し始めている。

出荷直前の玉ねぎ。差し込み式のダンボールは、切ってある溝に即して折り合わせていくだけで箱になる。手軽に組み立てられるので作業を軽減できる
 
玉ねぎ用の金属製コンテナ。低価格でリースできるうえ、リース会社が配送先でコンテナを回収してくれるので、コストと手間を大幅に削減できた
「農協としてできることはすべてやらないと、かかわる人たちとの協力体制は築けませんから」と三浦さんは言う。こうした生産者側の努力に対し、生活クラブは食べて支えるのはもちろん、職員・組合員による農作業の参画なども積極的に行っている。農協と生協……ふたつの協同組合が助け合うことで、農業は持続可能になっていく。

※3 「ビオサポ」とは、生命を意味する「BIO」と「美を」を掛け、生命力あふれた健康な食生活を「サポート」するという意味の、生活クラブ独自の表現。「ビオサポ食材セット」は、カット済みの国産野菜、提携生産者の肉類、化学調味料を使わない調味料をセットにしたミールキットで、手軽に、短時間で作れる。
 
撮影/高木あつ子
文/本紙・山本 塁
 
『生活と自治』2025年9月号「連載 ものづくり最前線 いま、生産者は」を転載しました。
 
【2025年9月12日掲載】
 

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