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世界の仲間と語り合う どんな社会で生きたいのか、協同組合は何ができるのか

貧困や人権など、人類が直面する課題に具体的な解決策を提示する人物、団体に贈られる「ライト・ライブリフッド賞」。創設した財団では、受賞者の知識や実践を共有するため、世界数カ所の大学にライト・ライブリフッドセンターを設置、毎年交流を深めている。国連が国際協同組合年と定めた今年5月、スイスのチューリッヒ大学の同センターで、持続可能性をテーマとする公開イベントが開催され、1989年に同賞を受賞した生活クラブもこれに参加、生活クラブ連合会の山本江理常務理事が出席し、ローカルSDGsの広がりなどについて講演した。講演の内容や手応え、各団体との交流の様子を山本さんに語ってもらった。
スイスでの公開イベントに参加した生活クラブ連合会・山本江理常務理事(右)と通訳として同行した企画部・清水亮子さん(撮影:ライト・ライブリフッド財団/エイミー・アウ)
 
ライト・ライブリフッド賞は1980年に創設されました。ノーベル賞にはなかった「社会正義」と「環境問題」への貢献に対して賞を設けたことで、「もう一つのノーベル賞」といわれています。

生活クラブは89年に「社会と環境を考えながら、生産から消費、廃棄まで責任を持つ経済の仕組みをつくってきたこと、活動の主体が地域に暮らす女性たちであること」が評価され、受賞しました。

受賞当時は、生活協同組合として発足して約20年の頃。その間、環境と人体への影響が懸念される合成洗剤ではなくせっけんを広げる運動を進め、消費者自ら出資して牛乳工場を建設し、地域に助け合いの仕組みをつくるなど、さまざまな活動に挑戦してきました。受賞は組合員の誇りとなり、その後の活動への励みとなりました。

同賞を創設した財団では、先見の明を持つ人々の行動をたたえると同時に、受賞者の理念や実践を広めることで長期的な社会変革を促進しようと、賞の授与だけにとどまらずその後の活動の支援もしています。今年は国際協同組合年ということで、共同購入を基盤にもう一つの経済圏をつくる生活クラブの活動を共有しようと、講演依頼を受けました。

注目と期待と

講演では、「消費材」の意味も紹介(撮影:チューリッヒ大学ライト・ライブリフッドセンター/マリーナ・メンツ)

講演で主に話したのは、受賞後の生活クラブ運動の広がり、特に山形県庄内地域におけるローカルSDGsの展開についてです。

2023年度の日本の食料自給率は38%です。農業就業人口は20年前に比べると約219万人減少して半分以下になっています。この数は、長野県や新潟県の1県まるごとの人口とほぼ同数です。食料自給率は単なる数字ではなく、“安心して暮らせる社会”の基盤となる数字であるともいえます。しかし、生産地が消滅しては私たちも暮らしていけません。地方の空洞化を都市部に暮らす私たちの課題として捉えなおす必要があります。そこで、生活クラブは生産者と共に、自治体や教育機関、企業などの協力も得て、食(F)、エネルギー(E)、福祉(C)、仕事(W)を創りつなぎ合わせる仕組みづくりに取り組んできました。地域にある資源に改めて光をあて、人が行きかい、お金も循環する。多様な人が参加するまちづくりを進めることで、地域全体の持続可能性を高めようという試みに、そして、その挑戦が42万人の食やエネルギーの共同購入を基盤に都市部の生活者と産地がつながり経済圏をつくっていることなどに大きな注目が集まりました。

スイスで出会ったさまざまな人から「世界では戦争や気候危機など多くの課題があるが、生活クラブは次に何をするのか」と質問され、期待の大きさを感じました。

パネルディスカッションでは、「サフィシエンシー(足るを知る)」という言葉が話題になりました。一般的には充足という意味ですが、「単に消費を我慢するだけではなく、自分たちの生き方、つながり方を問い直す行為」とされています。AIやITなど新しい技術をなんでも取り入れようとするのではなく、必要最低限の資源とエネルギーを使い、豊かに暮らしていこう、という考え方です。

今、食料は奪い合いの時代にあり、必要とされている人や場所に十分に届いていません。だからこそ、国内自給を追求し、生産や流通過程がわかる範囲で自治していくことの大切さに注目が集まりました。それは、生活クラブが50年以上にわたり続けてきた取り組みでもあります。これからのサフィシエンシー=足るを知る社会をつくる担い手としての責務をひしひしと感じました

イベントには、2022年にライト・ライブリフッド賞を受賞したベネズエラの協同組合ネットワーク「CECOSESOLA(セコセソラ)」の方も参加していました。
ベネズエラは独裁政権が続き、不正と汚職により人道的危機が深刻化しています。経済は破綻し、年間で770万人近くが隣国のコロンビアや米国に働きに行き、自国の家族の暮らしを支えています。

このような状況の中で1967年に、フードフェア(市)、葬儀場、保健センター(病院)を運営する協同組合であるセコセソラが設立されます。定期的に安価な食を手に入れたい、尊厳ある死を実現したい、安心して受診できる病院を、と願う人々が連帯することによって立ち上げられました。10万人の組合員のうち1500人がその事業で働いており、消費者・労働者・生産者で構成される協同組合です。徹底した情報公開のもと、年間3000回以上のミーティングを開き意見交換することで、公平で信頼に基づくコミュニティーがつくられています。

協同組合は社会が危機の状況にある時こそ力を発揮するといわれていますが、セコセソラの活動はまさにそれを体現しています。人々はどんな状況にあっても信頼に基づいて手を取り合い、地域に根差した協同組合を通じて安心できる社会をつくっていくことが可能なのだと気づかされました。
遠い南米の国ベネズエラに、生活クラブと同時期に誕生し、同じような理念で活動してきた協同組合がありました。その活動に共感し、思わず握手を求めていました。
 
ジュネーブ国際・開発研究大学院の学生団体との交流(撮影:ライト・ライブリフッド財団/エイミー・アウ)

多様性を強みに

スイスで出会った人たちは、国籍も違えば肌の色も違い、年代もさまざま、障害のある人もいました。互いの違いを認め合い理解し、共に暮らしを営むことが当たり前である姿に、「インクルーシブ(包摂)」を実感しました。日本から留学している大学生は、「ここで学ぶことで、多様性を経験できることを幸運に思っています。人間らしい尊厳を持った生き方ができる社会のために、貢献できることを考えたい」と語っていました。

これからの生活クラブ運動の展開を考える時に「多様性」は重要なカギとなります。未来を担う若者世代をはじめとした多様な人々と、この時代に何が必要なのか、どんな社会で生きたいのか、そのために協同組合は何ができるのかを、あきらめることなく探していくことに、「希望」があるのではないかと考えています。

構成/伊澤小枝子

★『生活と自治』2025年9月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 

■「ライト・ライブリフッド財団」のウェブサイトで、ベネズエラの協同組合「CECOSESOLA(セコセソラ)」と生活クラブの活動が紹介されています(英語・スペイン語)。

https://rightlivelihood.org/visual-stories/beyond-profit-inside-the-co-op-movement-that-feeds-funds-and-powers-itself/(2025年7月25日)
 
【2025年9月19日掲載】
 

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