「一人の100歩よりも100人の1歩」 環境まちづくり・エコメッセの歩み
2001年に生活クラブ東京が描いた構想をもとに、教育や農業、ケア、環境など地域に必要な機能を自分たちでつくっていこうといくつかの団体が都内に誕生している。その一つが、NPO法人「エコメッセ」、通称「環境まちづくりNPOエコメッセ」だ。地域市民の人たちから、寄付された衣類や雑貨を販売し、その売り上げで太陽光パネルを設置し市民発電所とするなど、地域の環境活動を推進する。
地域の環境課題に取り組む

駒沢店にて、エコメッセ理事長の大嶽貴恵さん(左)、事務局長の岡本京子さん。2024年度のエコメッセ全店舗への寄付者数はのべ1万8023人に上る
「環境まちづくりNPOエコメッセ(以下、エコメッセ)」の本部・駒沢店には、食器、花器など高価なものから衣類や文具、手芸用品など小物類までが、所せましと陳列されている。スタッフと会話をしながら掘り出し物を探す人や、学校で使うのか、墨汁を買っていく子どももいた。
「毎日来てくれる人もいるんですよ」と話すのは理事長の大嶽貴恵さんだ。買い物をするだけでなく、地域の給水スポットも担うなど、みんなのサードプレイス、第三の居場所になっているという。
エコメッセが運営するのは「チャリティショップ」。寄付されたものを販売し、その利益を社会的な活動に充てる仕組みで、中古品の売買をするリサイクルショップとは異なる。
誕生のきっかけは、1986年のチェルノブイリ(当時)原発事故だった。事故後、生活クラブで扱う茶葉からは、当時の自主基準を超える放射性物質が検出され、組合員の中で脱原発について真剣に話し合うようになったという。
「自分たちが扱う食材については生産者と話し合い、基準も決めて取り組んできたのに、結局、地球を回り回って、汚染されてしまいました。暮らしを振り返ってみれば、当時は電力会社を選べず、原発由来の電気を使わざるを得ませんでした。自分たちが加害者にならないためにどうしたらいいのか、話し合ったんです」(大嶽さん)
98年にNPO法が施行されたことを機に、自然エネルギーの活用で環境負荷をかけない暮らしを実現しようと、NPO法人を立ち上げることにした。目指すのは、国や自治体から補助金を得て目的を限定した活動をするのではなく、自分たちでチャリティショップを運営し、その売り上げで市民発電所をつくる、自立した組織だ。店舗をつくるために、地域の組合員から「エコ債」という一人1万円の出資を募り、150万円を集めて2001年にスタートした。
「はじめは1店舗でしたが、当時の理事長が『一人の100歩よりも100人の1歩』と言って、車の運転、掃除、洋服のお直し、店番、出資など、それぞれにできることを募集し、組合員だけの参加の場とせず、各地域に広げていくことになりました」と大嶽さんは振り返る。
現在、店舗は都内に14ある。それぞれに地域でどういう活動をしたいか、生活クラブ組合員との話し合いを経て発足しているため、店舗ごとに活動に特色がある。
例えば地下水が豊富な昭島市の店舗では、雨水貯留槽を広め、水道水源である地下水の保全活動などを行っている。せっけん推進の活動が盛んな小金井市の店舗では、来店した人にせっけんの使い方を説明することもある。販売するだけではなく、せっけんを通して社会にどういう課題があるのか気が付いてもらいたいからだという。
「生活クラブの消費材と同じように、社会の課題を私たちの消費行動を変えることによって解決しようとするのがエコメッセです」
大量生産、大量消費の社会に対して、無駄なエネルギーを使わないよう、地域の人が寄付したものを地域の中で循環させて、地域の環境課題に取り組んでいる。
「環境まちづくりNPOエコメッセ(以下、エコメッセ)」の本部・駒沢店には、食器、花器など高価なものから衣類や文具、手芸用品など小物類までが、所せましと陳列されている。スタッフと会話をしながら掘り出し物を探す人や、学校で使うのか、墨汁を買っていく子どももいた。
「毎日来てくれる人もいるんですよ」と話すのは理事長の大嶽貴恵さんだ。買い物をするだけでなく、地域の給水スポットも担うなど、みんなのサードプレイス、第三の居場所になっているという。
エコメッセが運営するのは「チャリティショップ」。寄付されたものを販売し、その利益を社会的な活動に充てる仕組みで、中古品の売買をするリサイクルショップとは異なる。
誕生のきっかけは、1986年のチェルノブイリ(当時)原発事故だった。事故後、生活クラブで扱う茶葉からは、当時の自主基準を超える放射性物質が検出され、組合員の中で脱原発について真剣に話し合うようになったという。
「自分たちが扱う食材については生産者と話し合い、基準も決めて取り組んできたのに、結局、地球を回り回って、汚染されてしまいました。暮らしを振り返ってみれば、当時は電力会社を選べず、原発由来の電気を使わざるを得ませんでした。自分たちが加害者にならないためにどうしたらいいのか、話し合ったんです」(大嶽さん)
98年にNPO法が施行されたことを機に、自然エネルギーの活用で環境負荷をかけない暮らしを実現しようと、NPO法人を立ち上げることにした。目指すのは、国や自治体から補助金を得て目的を限定した活動をするのではなく、自分たちでチャリティショップを運営し、その売り上げで市民発電所をつくる、自立した組織だ。店舗をつくるために、地域の組合員から「エコ債」という一人1万円の出資を募り、150万円を集めて2001年にスタートした。
「はじめは1店舗でしたが、当時の理事長が『一人の100歩よりも100人の1歩』と言って、車の運転、掃除、洋服のお直し、店番、出資など、それぞれにできることを募集し、組合員だけの参加の場とせず、各地域に広げていくことになりました」と大嶽さんは振り返る。
現在、店舗は都内に14ある。それぞれに地域でどういう活動をしたいか、生活クラブ組合員との話し合いを経て発足しているため、店舗ごとに活動に特色がある。
例えば地下水が豊富な昭島市の店舗では、雨水貯留槽を広め、水道水源である地下水の保全活動などを行っている。せっけん推進の活動が盛んな小金井市の店舗では、来店した人にせっけんの使い方を説明することもある。販売するだけではなく、せっけんを通して社会にどういう課題があるのか気が付いてもらいたいからだという。
「生活クラブの消費材と同じように、社会の課題を私たちの消費行動を変えることによって解決しようとするのがエコメッセです」
大量生産、大量消費の社会に対して、無駄なエネルギーを使わないよう、地域の人が寄付したものを地域の中で循環させて、地域の環境課題に取り組んでいる。
多様な人の働く場

脱プラスチックを目指す「ちとちゃん」。着物の裏地を編んだ絹の身体洗い・食器洗い
ちとふな店(世田谷区)では週に二日、NPO法人「コンチェルティーノ」のメンバーが働く。障害のある人もない人もともに働く団体だ。「心と体に生きづらさを抱える人たち、一般社会になじめない人たちが、だんだんと元気になってきています。天候に左右されやすい体調など、特性に合わせながら働いています」と事務局長の岡本京子さんは言う。他にも多様な人が働き、一般就労するまでの前段階の場所にもなっている。
同じように障害者の就労支援をしながら貴重な資源を生かす「グリーンダウンプロジェクト」にも参加する。不用になった羽毛を回収し再製品化する活動で、エコメッセは回収場所となっている。
他にもソーラークッキングや廃油キャンドル作り、金継ぎと、多彩なテーマで環境を学べる出前講座も行う。活動が多岐にわたり、広報が追い付かないことが悩みだ。
「ここで買い物をすることは、太陽光パネルを街に増やしたり、植樹・育樹することに一緒に参加することになります。それらを広く伝えたいですね。店舗ごとに応援団ができて、勝手にインスタグラムなどに写真や動画を上げてくれたらいいのですが」と、大嶽さん。自分たちの地域でチャリティショップを立ち上げたいという人に指導に行くこともあると言う。「どんなミッションを持つのかが大事ですね。3人同じ思いの人がいればできます。呼んでくれたらいきますよ」
ちとふな店(世田谷区)では週に二日、NPO法人「コンチェルティーノ」のメンバーが働く。障害のある人もない人もともに働く団体だ。「心と体に生きづらさを抱える人たち、一般社会になじめない人たちが、だんだんと元気になってきています。天候に左右されやすい体調など、特性に合わせながら働いています」と事務局長の岡本京子さんは言う。他にも多様な人が働き、一般就労するまでの前段階の場所にもなっている。
同じように障害者の就労支援をしながら貴重な資源を生かす「グリーンダウンプロジェクト」にも参加する。不用になった羽毛を回収し再製品化する活動で、エコメッセは回収場所となっている。
他にもソーラークッキングや廃油キャンドル作り、金継ぎと、多彩なテーマで環境を学べる出前講座も行う。活動が多岐にわたり、広報が追い付かないことが悩みだ。
「ここで買い物をすることは、太陽光パネルを街に増やしたり、植樹・育樹することに一緒に参加することになります。それらを広く伝えたいですね。店舗ごとに応援団ができて、勝手にインスタグラムなどに写真や動画を上げてくれたらいいのですが」と、大嶽さん。自分たちの地域でチャリティショップを立ち上げたいという人に指導に行くこともあると言う。「どんなミッションを持つのかが大事ですね。3人同じ思いの人がいればできます。呼んでくれたらいきますよ」
撮影/新井春衣
文/本紙・佐々木和子
文/本紙・佐々木和子
★『生活と自治』2025年11月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
【2025年11月21日掲載】