「消費材」とは、生活クラブが独自に作った言葉だ。一般的に売り物は「商品」だが、生活クラブでは、「商品」とは言わずに「消費材」と言う。この言葉には、「食べ物やせっけんなどの生活に必要なものは、売って利益を得るためのものではなく、消費してはじめて価値があるもの」という考え方が込められている。

消費材は、「使う人の立場」に立って、組合員と生産者が対等な関係で協議しながら作っていく。原料の決定から栽培方法・製造工程・使用する農薬・食品添加物まで、独自基準に基づくオリジナル品が中心だ。価格も生産にかかる費用に基づき、組合員と生産者の話し合いで決定される。また、組合員があらかじめ利用する量をまとめることで、生産者はおよその必要量を把握できるので、生産のめどが立ち、無駄なく生産できる。組合員の「食べたい、使いたい」という声をもとに、安全・健康・環境に配慮しながら、生産者と協力して開発する「消費するための材」が「消費材」だ。

だが、こうした生活クラブ独自の言葉や表現に、はじめは戸惑う組合員が多い。そこで都市生活が新規加入者向けに取り組んできたのが、「消費材モニター」だ。「牛乳・卵」「食品添加物」など、月ごとに決められたテーマの資料とアンケートを新規加入者に配布し、消費材の理解を深める活動だ。

都市生活は、西宮共同購入会と神戸市民共同購入会という二つの会が合併して都市生活共同購入会ができ、1986年に法人認可された生活協同組合都市生活となった。消費材モニターの取り組みは、生活クラブ連合会に加入し、現在の都市生活となった翌年の2011年にスタートした。都市生活理事長の小谷里香さんは、始まった経緯をこう説明する。

「生活クラブ連合会に加入したことで、扱う品が随分変更になりました。そこで既存の組合員が、新たな生活クラブの『消費材』を理解し、利用し続けていくことを目指して、消費材モニターを始めたのです」
その後もこの活動は、新規加入者向けの取り組みとして、消費材の理解に寄与している。

現在、消費材モニターは、全６回。初回は、新規加入者全員に参加してもらい、２回目以降は、希望者のみで実施する。

例えば、今年の５月のテーマは「鶏肉・豚肉・牛肉」。資料には「食肉の生産者、育て方、飼料の内容までが明らかになっていること」「生産効率ではなく、安心やおいしさを大切にしていること」「国産のエサを増やす努力をしていること」など、生活クラブの食肉の概論に加え、牛肉、豚肉、鶏肉、それぞれについての解説が掲載されている。資料で学んだら、次の〇×クイズで復習できる。問題は、「生活クラブの牛肉は、『国産牛』と『和牛（褐毛（あかげ）和種）』である」（答え○：褐毛和種の取り組みは、大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀の５府県にある六つの生活クラブのみ）「石井養豚センターのウインナーやハムは、安くするために外国産の豚肉を使っている」（答え×：石井養豚センターの取り組みも関西の六つの生活クラブのみ）「『丹精國鶏（くにどり）』は、国内で開発・改良された国産鶏種『はりま』のお肉である」（答え○）などだ。最後にアンケートに「今回の資料で印象に残ったこと、人に伝えたいと思ったこと」を書いて提出すると、中濃ソースのプレゼントがもらえる仕組みだ。

組合員が主体的に参加して学ぶこの活動によって、一人当たりの利用高が、参加しない人よりも高くなる結果が出た。また、新規加入者の離脱防止にも貢献している。消費材モニターの意義を小谷さんはこう語る。

「おいしさと安心・安全を理由に加入してくださる方が多いと思いますが、消費材モニターに参加することで、食べ物の向こう側がどうなっているのか知りたい、日本を取り巻く食の環境を理解したいと思えれば、より一層、消費材を利用しようという気持ちになってもらえると思います」

消費材モニターへの参加をきっかけに、食への興味・関心が高まれば、生活クラブの活動が、より一層楽しくなるだろう。
 

撮影／小澤晶子　
文／本紙・山本　塁

★『生活と自治』2025年12月号 「生活クラブ 夢の素描（デッサン）」を転載しました。
 

【2025年12月26日掲載】