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苦渋の決断から一転、「未来につなぐ」新たな一歩へ

生活クラブ都市生活(本部・兵庫県西宮市)では、自前の電源をつくろうと2016年から住吉川での小水力発電開発を目指し活動を進めてきた。だが23年6月、諸事情が重なり正式にこの計画の断念、撤退を表明した。それでも7年に及ぶ活動で見いだされた成果は大きく、これらを次世代につなぐため、新たな活動に向け一歩を踏み出した。メンバーは可能性を未来に託し、前を向く。

自前電源への希望

江戸時代の水車産業の様子がわかる跡地。水車がはまっていた滝つぼの周囲には、車軸の両側に置かれた臼が転がっている。後ろは、一段上の作業場を支える石垣
 
発端は2015年。「この地域に小水力発電に最適な場所がある」と言う組合員からの情報提供だった。小水力発電開発に長年携わってきた人で、場所は神戸市東部を流れる住吉川の上流だという。その頃、生活クラブ都市生活は、地域や生産者の見える再生可能エネルギー(以下、再エネ)で暮らすことを目指し、「生活クラブでんき」の共同購入を始める直前。関西地域にはまだ、生活クラブエナジーと提携する再エネ電源はなかった。当時の担当理事、高岡敦子さんは「自前の電源を持ちたいねと話し合っていたところ。希望が見えました」と振り返る。共に環境委員会の活動をしていた大沼和世さんは「JR住吉駅から近い場所というのも魅力でした。みんなで気軽に見学に行ける、身近な電力になる」と期待を寄せた。

さっそく現場を見に行くと、「取水はここから」「ここの急峻な流れで発電ができる」など、水がエネルギーを生み出すリアリティーが感じられた。調べていくと住吉川の流域にはかつて80基以上の水車群があり、江戸時代には水車を動力として搾油や製粉、精米などが行われ、地域の産業を発展させてきた歴史があることもわかった。全国的にも有名な「灘の酒造り」は、この地での酒米精米に支えられていたという。「現地にはその痕跡もあって、歴史のロマンも感じられ夢が膨らみました」(大沼さん)

こうして16年、都市生活の組合員を中心に「住吉川小水力発電所を実現する会」(以下、実現する会)を立ち上げ、本格的に電源開発を進めていくこととなった。

新たな発見、広がる活動

水車による精米の仕組みを描いた内田瑞穂さんのイラスト。水の回転力で杵(きね)を上下させ、臼の中の玄米をつく(「水車を未来につなぐ会」制作の「水車の森MAP」より抜粋)

実現する会の活動は、二つの柱を中心に進められた。一つは「小水力発電」とは何かを多くの人に知ってもらうこと。「開発というと自然破壊というイメージを持つ人も多いのですが、小水力発電は環境負荷をかけず自然を活用する仕組みだと知ってほしいと思いました」と、メンバーの一人、内田瑞穂さんは言う。特に今回は、昔から使われてきた水路などの設備を活用する試みだ。大規模開発とは違う形で発電できる可能性を大勢に知らせたいとの思いがあった。

もう一つは、忘れ去られようとしていた水車の歴史を掘り起こし地域に知らせる活動だ。「水車くるくる講座」と題した連続講座を開催すると郷土史に興味を持つ多様な人が参加するようになった。講師の一人に教えられ、水車跡周辺の草刈りをすると、草に覆われていた石垣が姿を現した。「川から取水した水が、水路を伝い直径6メートル近い水車の上に落ち、その力で水車が回り車軸の両側に並んだ臼の中の酒米をつく仕組みです。山の斜面に沿って段を造りその上に作業場があったのですが、それを支えていた石垣が現れて全体構造がわかりました」と当時の生活クラブ都市生活、専務理事の角田学さんは説明する。かなりの規模の水車設備があり、多くの人々が労働していた姿が思い浮かぶようになったと言う。これら水車の場所を示す流域マップを作製したのは藤原晴美さんだ。地元の酒造会社に見せたところ「自社のことなのにそんな歴史があるとは知らなかった、ぜひほしい」と言われ、快く提供した。その後、講座に参加したり、積極的に協力してくれるようになったと話す。

活動は地域に広がり土地の持ち主も快く同意してくれ、環境調査も問題はなし。行政との事前折衝も順調に進んだ。ただ、建設予定地周辺には、古くからの自治組織があり、より丁寧に地元との合意をつくっていく必要があった。じっくり構えて理解を広げていこうと、実現する会は計画を延期、くるくる講座や現地ツアーなどに一層、力を入れることにした。

電力の固定価格買取制度(FIT)の認定要件の変更を知らされたのは、その矢先のことだった。

「未来につなぐ」思い

「たたみかけるように、いろいろなことが押し寄せました」と、メンバーは当時の無念の思いを口にする。20年度のFIT制度改定で地域一体が認可要件となり、生活クラブエナジーとの提携を前提とする事業は認定が難しくなった。折からの建築資材の高騰、コロナ禍による活動の停滞なども重なり、事業成立の見込みは立たず、計画は断念せざるを得なくなった。

そんなとき、講座参加者から知らされたのが神戸歴史遺産認定制度の情報だ。地域で大切にされてきた歴史や技術を認定することで、その保護、活用を支える制度で、21年度から始まったばかりだという。

「地域の人も知らなかった水車の歴史や役割がここまでわかってきたのだから、市の認定を受けて、さらに周知する活動を続けよう」と意見がまとまった。共に登山道の環境整備を行ってきた「兵庫県勤労者山岳連盟」にも声をかけ、24年9月、「水車を未来につなぐ会」を立ち上げた。

「神戸歴史遺産認定という新しい目標が見えて、これまでの活動が無駄にならないと思うとすっと気持ちが切り替えられました」と大沼さんは言う。こうして体制も新たに活動を続けた結果、25年2月「住吉川の水車小屋跡」は神戸歴史遺産として認定され、その活動は、今後も跡地の整備と歴史の伝承が期待できるとの評価を得た。

一方、電源開発撤退について、多少のモヤモヤが残っていないわけではない。そう打ち明ける内田さんは、それでも「地域の貴重な資源や歴史を伝えることで、これらを大事に思う人を増やし、いつかここに再エネ電源をつくりたい。その思いは『未来につなぐ』という名前に込めました」と前を向く。原発を止めたいとの思いで活動を始めたという高岡さんは「取水から発電までこのエリアで一貫してできることは、これからも何度でも語っていきたい」と力を込める。

「未来につなぐ」という名前にはこれからの活動のイメージが反映されていると、角田さんは言う。今後、講座を重ねてたくさんの人を現地に案内し、この地域の可能性を知ってもらい、将来には小水力発電も。メンバーはその可能性をあきらめてはいない。 

前列左から、現在「水車を未来につなぐ会」の事務局を務める角田学さん、藤原晴美さん、副会長の大沼和世さん、後列左から草野睦美さん(「生活と自治」編集委員)、内田瑞穂さん、高岡敦子さん
 
写真/高橋保世
文/本紙・宮下 睦
 
★『生活と自治』2026年1月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。
 
【2026年1月23日掲載】
 

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