注視・熟考・検証 「高市政治の素顔」
―アイドル論的視座からの思索― (上)
中森ゼミ特別企画 トークセッションpart2(上)
アイドル評論家 中森明夫さん
朝日新聞編集委員 高橋純子さん
アイドル評論家 中森明夫さん
朝日新聞編集委員 高橋純子さん

2025年10月に高市早苗政権が発足してから8カ月が過ぎました。これまで支持率50パーセント超を続けてきた「高市人気」の原動力はSNSや動画を活用した「広報活動」にあるとされますが、特別国会が閉会を迎える2026年7月に下落傾向にとなり、50パーセントを下回る水準と時事通信が報じました。背景には大多数の国民が苦しむ諸物価高騰、石油由来のナフサ不足による塗料やインク、建設資材などの高騰といった「庶民生活を揺るがす諸課題」の解決を最優先せず、国家の威信や権力基盤の強化を目指した法案審議を性急強引に進めた高市内閣への不信感があります。そうしたなか「国論を二分する課題」とすると高市総理自身が語った「国旗損壊罪」と「皇室典範改正法」は国会を通過。「数の力」に依拠した多数決によって法制化されました。(2026年7月24日現在、副首都構想法案は審議中。※このセッションは6月5日実施)
「JIB(ジブ)」に党内からも「大政翼賛」の声
――いまの政治状況をどうご覧になりますか。
中森 いや〜、本当に酷いですね。本欄(生活クラブオリジナルレポート)で半年前に懸念したことが現実になり、しかも当初の予想を大きく上回る惨状を呈している。困惑しますね。
参照 検証・再考・熟考「政治」と「推し活」――アイドル論的視座からの提言―― 1│生活クラブ生協連合会 ニュース・読み物
高橋 それでも高市さんが「上手い!」という中森さんの見解は変わってないんでしょ? 確かに底割れしないですね。支持も。
中森 そこですよ。問題の本質は高市さんそのものというより、現在の日本の社会状況にあり、そこをもっと考えないと。僕は2026年5月に自民党内に発足した高市早苗政権を支える超大型議員連盟の「国力研究会(略称JiB=Japan is Buck)」が大変気になる。
高橋 自民党議員の8割近くが参加しています、ただ、「寄らば大樹」はありませんが、今の自民党ならさもありなんかと。
中森 高市総理は「派閥を持たない」としていたのに、国力研究会なるものができた。それに自民党の村上誠一郎議員だけが「大政翼賛会じゃないか」とテレビカメラの前で異議を唱えました。
高橋 いまや村上誠一郎議員と、あとは岩屋毅議員くらいでしょう。おかしいことをおかしいとはっきりと指摘できる与党議員は。
中森 僕がいちばん危惧を感じるのは、何でも値上げ値上げで庶民の生活が大変になるなか、日本がさまざまな国内外の信頼と信用を喪失しつつあることです。それを端的に表すのが、国家の長たる総理大臣が国会で発言している内容があまりにも不可解かつ不透明だという事態です。そんな総理を大政翼賛的に支えるのが、国力研究会「ジャパンイズバック=JiB」とは、もう名称からして笑止千万、ブラックジョークでしょう。しかし、そうした不穏な動きをメディアも的確に批判できない。こんな政治やメディア状況が堂々とまかり通る日本のいったい何を信じたらいいのか、と惑うばかりです。
中森 いや〜、本当に酷いですね。本欄(生活クラブオリジナルレポート)で半年前に懸念したことが現実になり、しかも当初の予想を大きく上回る惨状を呈している。困惑しますね。
参照 検証・再考・熟考「政治」と「推し活」――アイドル論的視座からの提言―― 1│生活クラブ生協連合会 ニュース・読み物
高橋 それでも高市さんが「上手い!」という中森さんの見解は変わってないんでしょ? 確かに底割れしないですね。支持も。
中森 そこですよ。問題の本質は高市さんそのものというより、現在の日本の社会状況にあり、そこをもっと考えないと。僕は2026年5月に自民党内に発足した高市早苗政権を支える超大型議員連盟の「国力研究会(略称JiB=Japan is Buck)」が大変気になる。
高橋 自民党議員の8割近くが参加しています、ただ、「寄らば大樹」はありませんが、今の自民党ならさもありなんかと。
中森 高市総理は「派閥を持たない」としていたのに、国力研究会なるものができた。それに自民党の村上誠一郎議員だけが「大政翼賛会じゃないか」とテレビカメラの前で異議を唱えました。
高橋 いまや村上誠一郎議員と、あとは岩屋毅議員くらいでしょう。おかしいことをおかしいとはっきりと指摘できる与党議員は。
中森 僕がいちばん危惧を感じるのは、何でも値上げ値上げで庶民の生活が大変になるなか、日本がさまざまな国内外の信頼と信用を喪失しつつあることです。それを端的に表すのが、国家の長たる総理大臣が国会で発言している内容があまりにも不可解かつ不透明だという事態です。そんな総理を大政翼賛的に支えるのが、国力研究会「ジャパンイズバック=JiB」とは、もう名称からして笑止千万、ブラックジョークでしょう。しかし、そうした不穏な動きをメディアも的確に批判できない。こんな政治やメディア状況が堂々とまかり通る日本のいったい何を信じたらいいのか、と惑うばかりです。
政治に限らない「損か得か」の行動原理

――2026年6月5日付の全国紙朝刊の中見出しに高市首相は「逸らす、はぐらかす」とありました。高市さんは言語明快ながら論点ずらしが実に巧み。それでも報道陣は「なんでそう言い切れるんですか」と続けて聞かない。これまでの首相が曲がりなりにも続けてきた「ぶら下がり会見」もほとんど無いと報じられています。
中森 やっても質問は一つだけと決められているようですが「そんな会見なら御免蒙る。こちらから願い下げだ」と報道陣が連帯し、一丸となって退席すればいいと思う。かつて新聞嫌いで有名だった佐藤栄作総理が「新聞は嫌いだ。テレビ以外は会見場から出て行け」と発言。これに怒った報道陣が総員で会見をボイコット(1972年6月)して退席したように、一つだけとは何事かと抗議の意を示す必要がありますよ。
高橋 悔しいですが、もう一枚岩になれないのが実情だと思います。周知のように政権と距離が近く、「政府広報」と言われても仕方がないメディアもあります。かつてはジャーナリズム魂を持ち、ライバル関係にある他社とでも抗議すべきことは一枚岩となって抗議をしたり行動したりできました。ところが、今は自分と自社にとって「得か損か」が大事で、ジャーナリズムは二の次という傾向が強まってきているのではないかと思っています。
中森 その種の分断工作はジャーナリズムだけで起こっているわけじゃなく、社会のあらゆる場所で見られます。分かりやすいのは労働組合。最たるものが日本労働組合総連合会(連合)でしょう。結局は大企業の利益追求だけに注力し、結果として労働者を完全に分断しています。
高橋 公務員や公共民間労働者からなる全日本自治団体労働組合(自治労)系は比較的頑張っているのですが、いかんせん中央組織の腰が定まっていない。やっぱり「得か損か」という原理で動いているように見えます。
中森 それは日本社会全体が貧しくなってきていることの一つの証しではないですか。僕が20代を送ったのは1980年代で、後に「バブル経済」の時代とも呼ばれた。景気が良かったことの功罪は言われるけれど、社会に余裕がありました。意見や考え方が多少違うことや他者に対しても「寛容」でいられる社会だった。それがバブル崩壊後にはガラリと変わる。賛成反対に白黒と二者択一の「敵味方理論」に席巻されたかのような空気になっていった。今では、自分自身と自分が身を置く組織団体にとって「得か損か」が主たる選択基準とされる社会になってしまっています。
中森 やっても質問は一つだけと決められているようですが「そんな会見なら御免蒙る。こちらから願い下げだ」と報道陣が連帯し、一丸となって退席すればいいと思う。かつて新聞嫌いで有名だった佐藤栄作総理が「新聞は嫌いだ。テレビ以外は会見場から出て行け」と発言。これに怒った報道陣が総員で会見をボイコット(1972年6月)して退席したように、一つだけとは何事かと抗議の意を示す必要がありますよ。
高橋 悔しいですが、もう一枚岩になれないのが実情だと思います。周知のように政権と距離が近く、「政府広報」と言われても仕方がないメディアもあります。かつてはジャーナリズム魂を持ち、ライバル関係にある他社とでも抗議すべきことは一枚岩となって抗議をしたり行動したりできました。ところが、今は自分と自社にとって「得か損か」が大事で、ジャーナリズムは二の次という傾向が強まってきているのではないかと思っています。
中森 その種の分断工作はジャーナリズムだけで起こっているわけじゃなく、社会のあらゆる場所で見られます。分かりやすいのは労働組合。最たるものが日本労働組合総連合会(連合)でしょう。結局は大企業の利益追求だけに注力し、結果として労働者を完全に分断しています。
高橋 公務員や公共民間労働者からなる全日本自治団体労働組合(自治労)系は比較的頑張っているのですが、いかんせん中央組織の腰が定まっていない。やっぱり「得か損か」という原理で動いているように見えます。
中森 それは日本社会全体が貧しくなってきていることの一つの証しではないですか。僕が20代を送ったのは1980年代で、後に「バブル経済」の時代とも呼ばれた。景気が良かったことの功罪は言われるけれど、社会に余裕がありました。意見や考え方が多少違うことや他者に対しても「寛容」でいられる社会だった。それがバブル崩壊後にはガラリと変わる。賛成反対に白黒と二者択一の「敵味方理論」に席巻されたかのような空気になっていった。今では、自分自身と自分が身を置く組織団体にとって「得か損か」が主たる選択基準とされる社会になってしまっています。
「天性」の力で「女性性」も有効に
――労働組合の中央組織がフラフラしているという指摘がありましたが、高市総理の国会での「中傷動画問題」をめぐる答弁もフラフラどころかブレブレでした。
中森 完全に「はぐらかし」でしょう。質問者が聞いているのは総理の秘書と動画製作者との関係性の有無なのに「秘書は関係がないと言ってます」とか「私は秘書を信じます」ではまったく答えになっていません。
高橋 首相がどう思っているかを聞いていないのに、どういうわけか自分の胸中を語った。それも臆面もなく、堂々とです。
中森 「中傷動画問題」だけでなく高市総理を支援する目的で総理の名と肖像(イラスト)付で発行された暗号資産「サナエトークン」への関与も未解明なままです。このままでは安倍政権時代の「モリカケ・サクラ」と同じように、政権存続を揺るがし脅かす材料にもなりかねないでしょう。ここでも高市総理は安倍元総理の「手法」を踏襲しようとしています。いくらなんでも朝日新聞が公文書改竄を一面で報じたとき、さすがの安倍政権も終わるかと思いきや乗り切っちゃった。
高橋 それは高市さんの天性的な能力?
中森 もちろん、天性のものでしょう。そもそも高市総理が石破茂前総理や次期総理の座を狙う自民党内のライバル議員に、条件的にはとても敵いません。政治家2世じゃない。しかも女性。大変なハンディを負っている。そんな人が総理になるのは至極困難なことでしょう。おまけに石破さんもそうですが、高市総理は自民党を一度離れていますしね。
おまけにゴシップ(興味本位のうわさ)記事も少なくない。幼少期に親から教育勅語の薫陶を受けて育ち、「そんな大学なんか行くな」と反対されながら神戸大学に進学したとかね。渡米したときの肩書きについての疑惑もあれば、帰国後にテレビのニュースキャスターになったとき、共演した鳥越俊太郎さんをはじめとする方々からは酷評されてもいる。しかし、それはのし上がっていく過程で付いて回る話です。そこが石破前総理やライバル議員たちとの大きな違いで、高市総理は「女性性」も効果的に利用している。あの米国大統領とのベタベタ会見を見れば一目瞭然でしょう。
中森 完全に「はぐらかし」でしょう。質問者が聞いているのは総理の秘書と動画製作者との関係性の有無なのに「秘書は関係がないと言ってます」とか「私は秘書を信じます」ではまったく答えになっていません。
高橋 首相がどう思っているかを聞いていないのに、どういうわけか自分の胸中を語った。それも臆面もなく、堂々とです。
中森 「中傷動画問題」だけでなく高市総理を支援する目的で総理の名と肖像(イラスト)付で発行された暗号資産「サナエトークン」への関与も未解明なままです。このままでは安倍政権時代の「モリカケ・サクラ」と同じように、政権存続を揺るがし脅かす材料にもなりかねないでしょう。ここでも高市総理は安倍元総理の「手法」を踏襲しようとしています。いくらなんでも朝日新聞が公文書改竄を一面で報じたとき、さすがの安倍政権も終わるかと思いきや乗り切っちゃった。
高橋 それは高市さんの天性的な能力?
中森 もちろん、天性のものでしょう。そもそも高市総理が石破茂前総理や次期総理の座を狙う自民党内のライバル議員に、条件的にはとても敵いません。政治家2世じゃない。しかも女性。大変なハンディを負っている。そんな人が総理になるのは至極困難なことでしょう。おまけに石破さんもそうですが、高市総理は自民党を一度離れていますしね。
おまけにゴシップ(興味本位のうわさ)記事も少なくない。幼少期に親から教育勅語の薫陶を受けて育ち、「そんな大学なんか行くな」と反対されながら神戸大学に進学したとかね。渡米したときの肩書きについての疑惑もあれば、帰国後にテレビのニュースキャスターになったとき、共演した鳥越俊太郎さんをはじめとする方々からは酷評されてもいる。しかし、それはのし上がっていく過程で付いて回る話です。そこが石破前総理やライバル議員たちとの大きな違いで、高市総理は「女性性」も効果的に利用している。あの米国大統領とのベタベタ会見を見れば一目瞭然でしょう。

高橋 見ていてつらいです。あの振る舞いは彼女にとってはごく「自然」なことで、永田町を生き抜いていくなかで身に付けた、身に付けなければならなかった。彼女の生き様がそこに現れていると思います。ただ、一概に高市さんが悪いとは言えず、自民党の「オジさん」たちが彼女をそうさせてきた側面が多分にある。女性議員を「マスコット」のように扱ってきた自民党という組織の「体質」も問われていると思います。
中森 わかります。ただ、今はずいぶんと変わってきたんじゃないですか。10年ぐらい前まではテレビのニュースキャスターの横には、久米宏さんなら小宮悦子さん、筑紫哲也さんなら誰々といかにも美人秘書然とした若い女性キャスターたちがいました。しかもテーブルの下が見えるようになっていて、斜めに揃えた脚を見せていた。高市さんもああいう時代を生きてきた人なんですよ。
ただし今は有働由美子さんとか小川彩佳さんのように女性がニュース番組を任されるようになっている。女性がメインキャスターを張る時代になった。小川さんが男性の起こした醜悪な性犯罪があると、眉間にシワ寄せて不快感をあらわにしたりしますよね。小川さんにこんな表情をされる事件を起こす人間になってはいけない、と男たちは思う。これも一つの教育といえるのではないでしょうか。良い変化ですね。
たかはし・じゅんこ
1971年福岡県生まれ。1993年に朝日新聞入社。鹿児島支局、西部本社社会部、月刊「論座」編集部(休刊)、オピニオン編集部、論説委員、政治部次長を経て編集委員。
なかもり・あきお
作家・アイドル評論家。三重県生まれ。さまざまなメディアに執筆、出演。「おたく」という語の生みの親。『東京トンガリキッズ』『アイドルにっぽん』『午前32時の能年玲奈』『寂しさの力』『青い秋』など著書多数。小説『アナーキー・イン・ザ・JP』で三島由紀夫賞候補。近著に『推す力 人生をかけたアイドル論』(集英社新書)がある。
撮影・越智貴雄 取材・構成 生活クラブ連合会 山田衛
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