【遺伝子組み換えコラムvol.2】遺伝子組み換え作物の環境への影響
生活クラブは1997年以来、遺伝子組み換え作物(Genetically Modified Organisms=GMO)を取り扱わないことを基本にし、すべての消費材の原材料から家畜の飼料まで見直し、遺伝子組み換え作物を使わないよう対策を行ってきました。
そもそも遺伝子組み換え作物とはどんなものなのか、どんな問題があるのか、なぜ対策が必要なのかなど、このコラムではシリーズで一つひとつ解説していきます。
今回は、遺伝子組み換え作物を取り巻く問題について解説します。
第2回 遺伝子組み換え作物の環境への影響
遺伝子組み換え作物は、遺伝子組み換え技術により病害虫や雑草による被害を抑えて増収が期待できる、その結果将来の食糧不足に対して画期的な解決策となりうると言われてきました。本当にその通りなのでしょうか。
日本への輸入が認められてから約20年、その間、遺伝子組み換え作物に関する環境への影響が報告されています。
路肩に自生するナタネに見つかった、組み換え作物由来の遺伝子
現在、日本国内における遺伝子組み換え作物の栽培は、一般ほ場での商業栽培は行なわれていない状況です。しかし、各地に自生するナタネの遺伝子を調べたところ、組み換え作物由来の遺伝子が見つかっています。これは輸入された遺伝子組み換えナタネが運搬時などにこぼれ落ち、その場所で自生したり、在来のナタネやカラシナなどと交雑したりしたことによると考えられています。
遺伝子組み換えナタネの国内自生を市民が監視する活動が続けられており、2005年から生活クラブでも各地域の組合員が参加してきました。これは港周辺、港からの幹線道、市街地などに自生するナタネ・カラシナなどを採取して調査するというものです。結果、毎年組み換え遺伝子を持つナタネが発見され、遺伝子組み換えナタネの自生の拡大を示す事実が確認されています。2018年度は20都道府県の生活クラブ組合員が496検体を調査しました。その結果、10検体から組み換え遺伝子が検出されました。
2018年の遺伝子組み換えなたねの自生調査結果はこちら↓
/news/detail.html?NTC=0000050956
除草剤の使用を助長するイタチごっこに
遺伝子組み換え作物には、特定の除草剤に対して耐性を持つものが多数開発されています。特定の除草剤だけ使用すれば、作物には影響がなく雑草だけが枯れるというもの。除草の手間が削減でき、雑草の駆逐により収量もあがるとされてきました。
ところが、その栽培現場で除草剤をかけても枯れない雑草が出現。そのため、新たな除草剤とそれに耐性を持つ遺伝子組み換え作物を開発しました。しかしまた除草剤耐性を持つ雑草が出現し始めました。
<除草剤と雑草のサイクル>
① 除草剤耐性雑草の出現。
↓
②別の除草剤を開発して散布。
↓
③ また耐性のある雑草の出現
このように雑草と遺伝子組み換え作物のイタチごっこに陥っています。このイタチごっこを繰り返すたびに、新たな除草剤を使わざるをえない状況になっており、環境や人体への影響についても懸念される事態となっています。
また、除草剤耐性と同様に、その作物を食べた害虫だけが死ぬという遺伝子組み換え作物も開発されましたが、結局、耐性を持つ害虫が発生。こちらもイタチごっこになっています。
このように遺伝子組み換え作物をめぐっては、食糧不足に対する画期的な解決策には至らず、それどころか想定外の事態が発生している状況です。このまま作り続け・食べ続ければ何をもたらすか、予測がつかない技術なのです。
【2018年9月11日掲載】
◆【遺伝子組み換えコラムvol.1】そもそも、遺伝子組み換え作物ってなんだろう? (2018年8月28日掲載)