重要目標11:組合員と生産者が互いに学びあい、消費材をよりよいものにステップアップ
生活クラブと関わるみんなでサステイナブルな実践:生活クラブ2030行動宣言
製造工程を点検する生活クラブ神奈川の組合員と(有)奥和の生産者
生活クラブは、「生活クラブ2030行動宣言」として11の目標を掲げ、サステイナブルな未来の実現をめざしています。重要目標11は組合員活動についてまとめた、SDGsにとどまらない生活クラブ独自の目標です。各地域の組合員一人ひとりが主役となり、日々の暮らしや地域のさまざまな課題に取り組んでいます。
その中の一つに「消費材※Step Up点検」があります。組合員が生産者の元を訪れ、対話しながら原料や製造工程を確認し、デビュー後も消費材をより安心して利用できるものにステップアップしていくオリジナルの活動です。
今回は生活クラブで長年にわたり愛されている「真あじ開き」を、生活クラブ神奈川の組合員が点検しました。参加した組合員の一人、萩原つなよさんと、生産者の有限会社奥和(以下、奥和)の奥村太郎さんにお話を伺いました。
※生活クラブでは取り扱っている食材や生活用品などを、利益を追求した「商品」ではなく、実際に使う人の立場にたった材であるという想いを込めて「消費材」と呼んでいます。組合員が自らの生活に必要なものが何かを考え、開発にかかわりながら、提携する生産者とともに納得いくものをつくり、みんなで利用しています。
2030行動宣言「重要目標11」についての詳細はこちら
ACTIONする人
生活クラブ神奈川 萩原 つなよ(はぎわら つなよ)さん/前列左から3番目
有限会社奥和 代表取締役 奥村 太郎(おくむら たろう)さん/前列中央
その中の一つに「消費材※Step Up点検」があります。組合員が生産者の元を訪れ、対話しながら原料や製造工程を確認し、デビュー後も消費材をより安心して利用できるものにステップアップしていくオリジナルの活動です。
今回は生活クラブで長年にわたり愛されている「真あじ開き」を、生活クラブ神奈川の組合員が点検しました。参加した組合員の一人、萩原つなよさんと、生産者の有限会社奥和(以下、奥和)の奥村太郎さんにお話を伺いました。
※生活クラブでは取り扱っている食材や生活用品などを、利益を追求した「商品」ではなく、実際に使う人の立場にたった材であるという想いを込めて「消費材」と呼んでいます。組合員が自らの生活に必要なものが何かを考え、開発にかかわりながら、提携する生産者とともに納得いくものをつくり、みんなで利用しています。
2030行動宣言「重要目標11」についての詳細はこちら
ACTIONする人
生活クラブ神奈川 萩原 つなよ(はぎわら つなよ)さん/前列左から3番目
有限会社奥和 代表取締役 奥村 太郎(おくむら たろう)さん/前列中央
点検に参加した組合員と職員、生産者
自分たちの食べているものは、どうやってつくられているの?
「消費材Step Up点検」は20年以上にわたり続く、消費材をよりよいものにしていくために欠かせない活動です。一つひとつの消費材は、組合員と生産者がいっしょに決めた「自主基準」を指針につくられています。原料そのものについてはもちろん、容器包装や使用するエネルギーなどにも基準が設けられています。生産者は自主基準をどのくらい満たしているか、その到達度を生活クラブに毎年報告。その報告内容をもとに、組合員が生産現場に赴き消費材を点検しています。数ある消費材の中から、何を点検するかを決めるのは組合員です。
同じマンションに住む方からのお誘いをきっかけに、約40年前に生活クラブに加入した萩原さん。これまで生活クラブ神奈川のさまざまな活動に携わり、「消費材Step Up点検」にも何度も参加してきました。
「今回、奥和がつくる『真あじ開き』を選んだのは、水産物の利用が減ってきている現状がきっかけでした。気候危機や世界情勢の変化など、水産物を取り巻く状況には多くの課題があること、産地とつながって分かって食べることが重要だと学び、点検の対象として選びました。」
また、点検する内容は原料や製造に関しての専門的な分野に及ぶため、参加する組合員は事前に消費材について学習してから点検に臨みます。今回の「消費材Step Up点検」に向けて、萩原さんは仲間とともに「真あじ開き」について話しあいを重ねました。「分からないことがあれば生産者に質問したり、市販品とのちがいを知るために市場調査をしたりもしました。毎回緊張しますし、難しいと感じることも多いですが、とても勉強になります」と語ります。
同じマンションに住む方からのお誘いをきっかけに、約40年前に生活クラブに加入した萩原さん。これまで生活クラブ神奈川のさまざまな活動に携わり、「消費材Step Up点検」にも何度も参加してきました。
「今回、奥和がつくる『真あじ開き』を選んだのは、水産物の利用が減ってきている現状がきっかけでした。気候危機や世界情勢の変化など、水産物を取り巻く状況には多くの課題があること、産地とつながって分かって食べることが重要だと学び、点検の対象として選びました。」
また、点検する内容は原料や製造に関しての専門的な分野に及ぶため、参加する組合員は事前に消費材について学習してから点検に臨みます。今回の「消費材Step Up点検」に向けて、萩原さんは仲間とともに「真あじ開き」について話しあいを重ねました。「分からないことがあれば生産者に質問したり、市販品とのちがいを知るために市場調査をしたりもしました。毎回緊張しますし、難しいと感じることも多いですが、とても勉強になります」と語ります。
生産現場に赴き、自分の目で確かめる
工場は全国でトップクラスの干物の生産量を誇る、静岡県沼津市にあります。2023年11月上旬、萩原さんをはじめとする11名の組合員が工場に赴き、「消費材Step Up点検」を実施しました。事前学習の結果、今回の点検のポイントは以下の2つに絞られました。
・「原料調達」「環境への配慮」「労働環境と雇用」の面から、持続可能な生産への取組みについて
・「温度管理」「防虫防鼠対策」など、衛生管理について
組合員を迎え入れたのは、奥和の奥村太郎さんです。
さっそく点検がスタート。最初に製造工程を見てまわります。
組合員は白衣と帽子、マスク、長靴を着用。白衣についたホコリや髪の毛を取るためにローラー掛けをし、入念に手を洗ってから、いよいよ工場の製造ラインへ。原料の真あじを解凍し、開きにしてから、塩汁(しょしる)に漬け、乾燥室で干物に仕上げた後、包装されて箱に詰められるまでを見学しました。
・「原料調達」「環境への配慮」「労働環境と雇用」の面から、持続可能な生産への取組みについて
・「温度管理」「防虫防鼠対策」など、衛生管理について
組合員を迎え入れたのは、奥和の奥村太郎さんです。
さっそく点検がスタート。最初に製造工程を見てまわります。
組合員は白衣と帽子、マスク、長靴を着用。白衣についたホコリや髪の毛を取るためにローラー掛けをし、入念に手を洗ってから、いよいよ工場の製造ラインへ。原料の真あじを解凍し、開きにしてから、塩汁(しょしる)に漬け、乾燥室で干物に仕上げた後、包装されて箱に詰められるまでを見学しました。
作業前の手洗いには生活クラブのせっけんを使用しています
製造工程の一つひとつを、くまなくチェック
製造工程の説明をする、奥和の製造部リーダー山田嘉彦さんと話を聞く萩原さん
「真あじ開き」には、旬の時期に国内で水揚げされた脂のりのいい真あじを使用しています。約-35℃で冷凍保管していた真あじを井戸からくみ上げた海水に浸け、職人が解凍具合を見ながらザルにあげていきます。組合員から排水の処理方法についての質問があがると、生産者からは「油を取り除く処理をしてから下水に流し、下水処理場を通って再び海へ戻る」との説明がありました。
「真あじ開き」には、旬の時期に国内で水揚げされた脂のりのいい真あじを使用しています。約-35℃で冷凍保管していた真あじを井戸からくみ上げた海水に浸け、職人が解凍具合を見ながらザルにあげていきます。組合員から排水の処理方法についての質問があがると、生産者からは「油を取り除く処理をしてから下水に流し、下水処理場を通って再び海へ戻る」との説明がありました。
真あじの主な産地は九州。一年分を買い付けしています
海水で解凍すると、浸透圧で旨みが逃げず鮮度が保てます
解凍された真あじは、一尾ずつ手作業で腹をさいて内蔵を取り除き、開きにしていきます。1人の職人がさばける量は、1日に約1,000尾。工場全体で1日に約1万尾の真あじをさばきます。
さばく工程はすべてが手作業。手際よく開きにしていきます
開きにしてから、サイズ分けされます
開かれた真あじは塩水で洗った後、生活クラブの消費材であるミネラル豊富な「真塩」でつくった「塩汁(しょしる)」に漬け込みます。30年近くつぎ足しながら使用しており、魚のサイズによって漬け込み時間を変えています。
開きにしたあじをザルにのせ「塩汁」に漬け込みます
味つけのあとは、涼風除湿乾燥機を設置した部屋で乾燥させます。天日干しに最も適した、11月の気候と同じ状態にセットしています。一般的に用いられることの多い熱風乾燥よりも、魚の持つ旨みを最大限に引き出せるのが特徴です。
乾燥室の中には、ひんやりとした風が流れています
乾燥後はセイロに並べた状態でバラ凍結させます
冷凍された「真あじ開き」は、ゴミなどの異物がついていないかを人の目で確認してから、4枚を1袋にパッキング。箱詰めされ、組合員の元へと届けられます。
袋詰めの前に、一枚ずつ最終チェックします
これから物流拠点、配送センターを経て、いよいよ組合員の元へ!
見学の後には、製造工程の説明や質疑応答の時間が設けられました。今回の点検のポイントに沿って、原料事情や内臓などの処理方法、再生可能エネルギーの導入、人員の確保や社員の働き方についても質問があがりました。奥村さんは改善に向けて取り組んでいる内容や、これからの対応について組合員に丁寧に答えていました。
組合員から、さまざまな質問が投げかけられました
組合員の率直な意見はつくり続ける糧になる
奥村 太郎さん
2000年に初めての「消費材Step Up点検」を受けて以来、2年に1回ほどのペースで依頼を受けているという奥村さん。生産者としても、ただの工場見学とはちがう緊張感があると語ります。
「最初の頃は何を見られるのかとドキドキしましたね。今は干物にスポットを当ててもらえることが大変ありがたく、『どうぞ見てください。教えてください』という気持ちでみなさんを迎えています。また、生産現場で働く職人たちは、自分がつくっているものについて質問を受ける機会がなかなかありません。組合員のみなさんから直接、声をかけてもらうことで、『この人たちが食べてくれているんだ』という実感が湧いて、やりがいにつながっているという声を聞きます。」
1981年から取り扱いがはじまった「真あじ開き」。組合員に40年以上にわたって愛されているロングセラー消費材ですが、そのおいしさは結果として生み出されたものだといいます。
「生活クラブから『おいしいものをつくって』と要望を受けたことはありません。確かな原料を選び、生産工程をきちんと整えてきた積み重ねが、おいしさにもつながったのだと思います。新しく生活クラブに入ったばかりの方々にも、消費材は完成されたものではなく、組合員が参加してつくっていくものだと知ってもらいたい。『消費材Step Up点検』は、生活クラブのよさが分かる活動なのだと思っています。」
生産者として毎日何千枚、何万枚もの干物をつくるなかで、組合員に届くのはその中の一枚。それがすべてとの思いで消費材をつくり続けていくとの決意も話してくれました。
安心・安全な食材は生産者とつくりだすもの
萩原 つなよさん
点検を終え、「熟練の職人の方々が手早く真あじを開いていくのが印象的でした。実際に生産現場を見て分かったことがたくさんありました」と萩原さんは語ります。
「一般的な工場見学などでは見られないところまで、すべて情報公開してくれるのは本当にすごいこと。組合員と生産者のほどよい緊張感はありつつ、質問などにも丁寧に答えてくれるので、互いの理解が深まり消費材への愛着が一層増しました。」
今回の「消費材Step Up点検」の報告は、生活クラブ神奈川の各地域生協内で共有され、機関紙にも掲載される予定です。また、奥和の生産者交流会を開催し、より多くの組合員に「真あじ開き」を知ってもらい、利用をひろげていくことを目標にしています。
「消費材は今が完成形ではなく、生産者とともに育てていく(Step Upしていく)ものです。生活クラブだから安心・安全なのではなく、組合員が追求して生産者とともにつくっているから安心・安全なんですよね。『消費材Step Up点検』は生活クラブでしかできない、最も生活クラブらしい組合員活動だと思っています。」
こうして組合員と生産者が同じ想いを持って、お互いに納得できる消費材づくりをしているのが生活クラブの特徴です。「消費材Step Up点検」のこれまでの実施回数は1,286回(2023年3月末現在)を数え、今後もさらに継続していく予定です。組合員自らが行動していくことで、消費材をよりよいものに。そして未来へとつなげていきます。
2030行動宣言紹介動画公開中&「わたしのアクション」募集中!
重要目標11の達成のため、自分が取り組みたいアクションを宣言してくれたのは、松下彰子さんです。
「子どもたちに安心できる食をつなぐため、組合員と生産者の交流の場である生産者交流会を開いています」と、お子さんといっしょにアクションを発信してくれました。
「子どもたちに安心できる食をつなぐため、組合員と生産者の交流の場である生産者交流会を開いています」と、お子さんといっしょにアクションを発信してくれました。
現在、Instagramではみなさんが考えた「わたしのアクション」を募集中!
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