重茂の海で昆布の加工作業を体験 夢都里路くらぶ、初の漁業企画を開催

2025年5月21日から23日まで、「夢都里路くらぶ」が初めて漁業分野の産地企画を開催しました。
長年の提携生産者、重茂漁業協同組合(岩手県宮古市重茂)の協力のもと、組合員5名が養殖昆布の加工作業を体験しました。
*夢都里路くらぶ(ゆとりろくらぶ):生活クラブの提携産地での農業や漁業を応援する取り組み。
長年の提携生産者、重茂漁業協同組合(岩手県宮古市重茂)の協力のもと、組合員5名が養殖昆布の加工作業を体験しました。
*夢都里路くらぶ(ゆとりろくらぶ):生活クラブの提携産地での農業や漁業を応援する取り組み。
夢都里路くらぶ 初の漁業企画

生活クラブの組合員が全国各地の提携産地で農作業に参加する「夢都里路くらぶ」は、2008年の発足以来、農業体験・援農などの企画を通年開催してきました。一方、発足当初から "生産する消費者" のあり方として「漁業」分野への参加をめざすことも方針としていました。
しかし、漁業は天候に大きく左右されるため、事前に決まった日程を計画するには不向きです。また、漁船に乗る作業での安全確保の問題や、早朝の作業のため漁港の近くに適切な宿泊施設を確保することも課題となって、企画を実現するハードルは高いものでした。
今回、作業の中心が陸上でできる昆布の湯通し・冷却・選別作業であること、雨天でも屋内で塩蔵昆布の仕分け作業ができること、そして漁港の近くに漁業体験の受け入れもできる民泊施設ができたこともあり、念願だった漁業分野での企画が実現しました。
津波の記憶に触れた初日の学び
5月21日午後、参加者は宮古駅に集合。あわびの種苗生産施設や、ボイル加工施設を見学し、作業体験のオリエンテーションを受けました。
重茂漁協の創設者が唱えた「天恵戒驕(てんけいかいきょう)」──天の恵みに感謝し、驕る気持ちを戒め、不慮に備える──は、今なお重茂漁協が掲げる根幹の理念です。明治時代の大津波の後、「ここより下に家を建ててはいけない」と刻まれた石碑を建て、地域の人々が教えを守り続けたため、東日本大震災では津波被害が最小限に抑えられました。そのうえ、生活クラブとともに長年取り組んできたせっけん運動によって豊かな環境が守られたおかげで津波が青く澄んでいたこと、ヘドロによる被害が他地域より少なかったこと。こうした話に、参加メンバーの誰もが深く心を打たれました。
翌日訪れた港には、東日本大震災の約1年後に生活クラブの組合員カンパによって贈られた漁船が停泊している姿を目の当たりにして、感動の声が上がりました。
重茂漁協の創設者が唱えた「天恵戒驕(てんけいかいきょう)」──天の恵みに感謝し、驕る気持ちを戒め、不慮に備える──は、今なお重茂漁協が掲げる根幹の理念です。明治時代の大津波の後、「ここより下に家を建ててはいけない」と刻まれた石碑を建て、地域の人々が教えを守り続けたため、東日本大震災では津波被害が最小限に抑えられました。そのうえ、生活クラブとともに長年取り組んできたせっけん運動によって豊かな環境が守られたおかげで津波が青く澄んでいたこと、ヘドロによる被害が他地域より少なかったこと。こうした話に、参加メンバーの誰もが深く心を打たれました。
翌日訪れた港には、東日本大震災の約1年後に生活クラブの組合員カンパによって贈られた漁船が停泊している姿を目の当たりにして、感動の声が上がりました。

大震災の翌年、寄付金を活用して建造された「第二与奈丸」の進水式(2012年5月17日撮影)
早朝から昆布の加工、選別作業に参加

水揚げされたこんぶ
翌22日は早朝5時のスタート。参加者は3つの漁家に分かれ、各作業場で昆布のボイル・冷却・選別作業を体験しました。
地元の漁家では、シーズン中は午前0時に出航し昆布を収穫、港に戻る午前3時ごろからボイル・選別作業にあたります。昆布は1回の収穫で約1トン。この量を一気にボイルし選別して朝8時の出荷に間に合わせるため、作業にはスピードも必要です。
水揚げ後、まず90度に加熱した海水でボイルします。茶褐色の昆布が鮮やかな緑色へ。茹で上がるとすぐに13度の海水でしっかり混ぜながら冷やします。こうすることで色と鮮度を保ち、水分蒸発を防いで保存性を高めることができます。

水揚げした昆布を90度に加熱した海水でボイル・冷却

冷却作業に続いて選別作業へ。病気で模様が出たもの、腐って変色したもの、異物が付着した昆布を見分け、除去するのは想像以上にたいへんな作業です。取り除いた部分は養殖アワビに与える飼料となるため、昆布には捨てるところはありません。
昆布に付着する異物の多くは、「ヒラハコケムシ」という海産小動物です。昨年は海水温の上昇のため急増し、選別作業の半分ほどの時間を、昆布から削ぎ落としたり切除して取り除く作業に費やされたということです。今年は海水温が例年並みで被害は比較的少なかったものの、取り除く作業を2時間ほど続けることになりました。
昆布に付着する異物の多くは、「ヒラハコケムシ」という海産小動物です。昨年は海水温の上昇のため急増し、選別作業の半分ほどの時間を、昆布から削ぎ落としたり切除して取り除く作業に費やされたということです。今年は海水温が例年並みで被害は比較的少なかったものの、取り除く作業を2時間ほど続けることになりました。

ボイル・冷却・選別された昆布

ヒラハコケムシ
塩蔵昆布の選別と計量
いったん作業を終えて朝食の後、次は塩蔵昆布の仕分け作業へ。今回は最後の工程、昆布を1箱ずつ計量し選別しながら出荷用の箱に詰めていく工程を体験しました。
ボイルし冷却した昆布は、2昼夜海水に浸けるか、塩水の洗濯機のような機械で40分間回転させるなどして塩漬けに加工します。その後、2トンの重しで水を切ります。それから塩蔵昆布を選別しながら計量し、出荷用の箱に詰めます。ここでも選別作業をするため、昆布は〈収穫時〉〈塩蔵昆布に加工後〉〈出荷前〉と、3度にわたって選別されることになります。
漁家によってそれぞれのやり方があるそうですが、家族数人で昼頃までこの作業にあたることが多いということでした。
ボイルし冷却した昆布は、2昼夜海水に浸けるか、塩水の洗濯機のような機械で40分間回転させるなどして塩漬けに加工します。その後、2トンの重しで水を切ります。それから塩蔵昆布を選別しながら計量し、出荷用の箱に詰めます。ここでも選別作業をするため、昆布は〈収穫時〉〈塩蔵昆布に加工後〉〈出荷前〉と、3度にわたって選別されることになります。
漁家によってそれぞれのやり方があるそうですが、家族数人で昼頃までこの作業にあたることが多いということでした。

塩蔵昆布の選別と計量

出荷用の箱に詰められた昆布
産地の実情を知り、未来への希望も共有
参加メンバーは、午後からは地域をめぐり「水産科学館」を見学するなどして過ごし、ふたたび翌日の朝5時からのボイル・選別・塩蔵昆布の仕分け作業に参加しました。
参加者の一人は「"天恵戒驕" の精神と重茂漁協の創設ビジョン、津波に見舞われた歴史の教訓や、これまでの生活クラブとのつながり、すべてのお話が感動的でした。震災からの復興の進展、昆布やわかめの収穫量や相場の乱高下などの厳しい実情も知ることができました。また、若い漁家のみなさんが地域の価値を発信しようと新たな挑戦をしていることがとても心強いものです。せっけん運動が町にしっかりと根付いていることも、生活クラブの組合員として、とてもうれしく思います」と語ります。
受け入れを担当してくださった重茂漁協の木村篤人さんは、「重茂でも若者が地元を離れることが多く、どこも後継者問題を抱えています。ですが、漁業は土地の恵みに感謝し、そこに住む親から子へと技術を受け継ぐことで継続してきました。夢都里路くらぶを通じて重茂のことを深く知っていただき、重茂産の消費材の利用がさらにひろがるきっかけになることを期待します」と語りました。
参加者の一人は「"天恵戒驕" の精神と重茂漁協の創設ビジョン、津波に見舞われた歴史の教訓や、これまでの生活クラブとのつながり、すべてのお話が感動的でした。震災からの復興の進展、昆布やわかめの収穫量や相場の乱高下などの厳しい実情も知ることができました。また、若い漁家のみなさんが地域の価値を発信しようと新たな挑戦をしていることがとても心強いものです。せっけん運動が町にしっかりと根付いていることも、生活クラブの組合員として、とてもうれしく思います」と語ります。
受け入れを担当してくださった重茂漁協の木村篤人さんは、「重茂でも若者が地元を離れることが多く、どこも後継者問題を抱えています。ですが、漁業は土地の恵みに感謝し、そこに住む親から子へと技術を受け継ぐことで継続してきました。夢都里路くらぶを通じて重茂のことを深く知っていただき、重茂産の消費材の利用がさらにひろがるきっかけになることを期待します」と語りました。

生活クラブと重茂漁協について、過去の記事もごらんください。
東日本大震災カンパで贈呈 希望の船が重茂に(2012年6月掲載)
わかめを作り、食べてもらうことが支援への恩返し。家族でわかめ漁を支え合う〈食をつむぐ人たち・わかめ篇〉(2019年6月掲載)
「豊かな海を守るために」重茂漁協が看板で意志表明(2020年9月掲載)
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【2025年6月11日掲載】