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【東日本大震災 復興支援活動10年】生活クラブの放射能対策

自主基準をめぐる議論と放射能検査
全品目検査と検査結果の公開

生活クラブ連合会品質管理部部長 槌田博
 
東日本大震災では放射能対策も余儀なくされました。福島第一原発事故後、国の規制値は跳ねあがり、生活クラブにおいてもチェルノブイリ事故以降、定めてきた自主基準値の運用を停止せざるをえなかったからです。安全・安心な食べものを届けるための苦悩の日々を振り返ります。

福島第一原発事故と放射能汚染の状況

2011年3月の原発事故で大気に放出された放射能は、ヨウ素換算約900PBq(ペタベクレル=1,000兆ベクレル)*1でチェルノブイリ原発事故の約6分の1に相当すると、国会事故調査委員会が報告しています。福島県内の1,800km² もの広大な土地が、年間5mSv(ミリシーベルト)*2以上の汚染地域になりました。

住民の放射線被ばく量はわかりません。福島県の県民健康調査で、住民約1万4,000人の事故後4カ月間の外部被ばく積算実効線量推計値は1mSv未満が57.0%、1mSv 以上10mSv未満が42.3%、10mSv以上が0.7%だったとしていますが、信頼できるのか疑問が残ります。住民の不安は根強くあり、子どもたちの甲状腺検査などの疫学調査が待たれています。

*1 ベクレル(Bq):放射能の量の単位。1Bqの放射能から1秒間に1回放射線が出る。国の一般食品の基準値は100Bq/kg。
*2 シーベルト(Sv):放射線被ばく量の単位。ミリシーベルト(mSv)は1,000分の1シーベルト。福島第一原発事故前の一般公衆の被ばく限度量は年間1mSvであったが、事故後は年間20mSvに緩和された。

 
文部科学省がこれまでに測定してきた範囲及び岩手県、静岡県、長野県、山梨県、岐阜県、及び富山県内における地表面から1m高さの空間線量率
 
2011年10月13日現在の値に換算した地上1mの空間線量率【出典】文部科学省(2011/11/11)
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11556111/radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/5000/4899/24/1910_111112.pdf

 

放射能自主基準をめぐる議論

チェルノブイリ原発事故(1986年) 後の輸入食品基準は370Bq/kgでした。福島原発事故直後に国の暫定規制値は、野菜類の放射性ヨウ素131が2,000Bq/kg、放射性セシウムが500Bq/kgに跳ね上がりました。

東日本に広がる汚染地帯と点在するホットスポットが見つかり、食品生産者は出荷停止(自粛)と風評被害に苦しみました。住民たちは100年以上継続する低線量被ばくのなかで、まずは子どもと妊婦を守るための行動を始めました。放射能の検査体制と定点観測網がまったく不足していて、情報不足による不信感と疑心暗鬼にさいなまれました。

そして、原発のない生活を決意しました。
桁違いに高い暫定規制値を前にして、事故直後の生活クラブは、事故以前の自主基準値37Bq/kg(国の基準値の1/10)の運用を停止するしかありませんでした。独自に自主管理する手段がないからです。私たちは、国の暫定基準値以下であるからよいとする態度ではなく、刻々と変化する事態と情報が錯綜するなかにあって、「放射能汚染が人の健康に与える影響に閾値(しきいち)はなく、より影響を受けやすい子どもや妊婦をはじめとして、できるだけ避けるのが望ましい」という考え方にもとづき、私たちができうる範囲で自主検査して、その情報公開を徹底することを方針としました。

国が2012年4月に定めた基準値と、消費材の全品目検査にもとづいて独自の自主基準を2012年4月から暫定運用し、2013年4月から本格運用しました。さらに2016年4月に、それまでの4年間の測定結果をふまえて新基準に改定しました。

*閾値:それより低ければ放射能の影響がないとされる線量値。

●2016年4月改定の新基準

放射能検査の推移

2011年度の前半は、毎日3検体の放射能検査を外部委託しました。生活クラブの牛乳で、千葉工場3月19日製造品からヨウ素26Bq/kg、セシウム6Bq/kg、栃木工場3月20日製造品からヨウ素78Bq/kg、セシウム12Bq/kgが検出されました。その後、毎日検出が続きましたが、4月15日を最後に、現在まで不検出が続いています。

2011年8月から新しく食品検査装置を2台導入して、全品目(毎週600検体)検査を始めました。その結果、葉物野菜や果物、きのこ類、お茶、牛乳、畜肉、海産物など広範な食品から放射能が検出し、生椎茸が国の基準値500Bq/kgを超過したため供給を止めました。翌2012年度は、さらに2台を増強し、青果物などの自主基準値50Bq/kgに対応した検査体制になりました。レンコンと抹茶が自主基準値を超え供給を止めました。

2013年度は自動運転できる5号機を導入して、検査数は年間2万検体になりました(2016年度からは検出下限を下げ、約1万検体を検査)。生椎茸、レンコン、米、栗からの検出が目立ちました。滋味深い食材ほど放射性セシウムを集める性質が強いようです。年々、検出濃度は下がり、自主基準を超えなくなりました。2014年度から検査品目の産地を絞り、検査頻度を増やしました。2014年度と2015年度も自主基準内が続き、自主基準の再検討を始めました。

2016年度は、高感度なゲルマニウム半導体検出器(6号機)を新規導入して、自主基準をさらに厳しく改定しました。そのため再び生椎茸とレンコンで自主基準を超えました。
2017年度は、出荷前検査でレンコンの自主基準超えを防ぎましたが、生椎茸が自主基準を超えました。

2018年度は、自主基準を超えませんでしたが、キノコ類やレンコンに加えて、青果や柑橘類からの再検出がありました。2019年度は、米(自主基準5Bq/kg)と「こどもせんべい」(自主基準不検出〈検出下限1Bq/kg〉)で自主基準を超え供給を止めました。これからも現在の基準を維持し、検査活動を継続します。
 

放射能汚染に立ち向かう生産者を支援する基金

2013年6月、生活クラブ連合会総会で、国の基準よりも厳しい自主基準値を超えたため消費材の供給を停止した生産者に対して、その損害を補償するための「放射能汚染に立ち向かう生産者を支援する基金」を設立し、組合員カンパで7,000万円を超える原資を積み立てることにしました。2015年に規約改正をして、生産者の放射能低減措置についても支援しています。2019年度は1,380,110円を執行し、残高は 70,272,121円を有しています。
★パンフレット『東日本大震災 復興支援活動 10年のまとめ … つながる、つづける、ともにゆく』(2021年3月11日発行)の転載です。
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