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【東日本大震災 復興支援活動10年】福島の子どもと知る権利を守る活動

生活クラブ独自の「甲状腺検査活動」

福島第一原発事故が発生した2011年10月から、福島県は「県民健康調査」の一環として、震災当時に0歳から18歳だった子どもの甲状腺検査を実施しました。しかし、納得のいく説明や情報の開示もなされなかったことへの不信感から、生活クラブふくしまは「福島の子どもと知る権利を守る活動」を提案し、生活クラブ連合会へ支援を要請。2012年12月より生活クラブ独自の甲状腺検査活動を始めました。現在も組合員からの復興支援カンパをもとに継続しています。

甲状腺検査を取り巻く社会状況

チェルノブイリ原発事故の際、子どもの甲状腺がんの多発が注目されました。もともと子どもの甲状腺がんの発生率は低く、放射能の影響が懸念されました。放射能による甲状腺がんは、年齢が低いほどかかるリスクが高いとされていますが、子どもの甲状腺については医学的にわかっていないことが多いのが実情です。福島県は2016年3月に公表した「県民健康調査における中間取りまとめ」のなかで、甲状腺がん多発の事実は認めたものの、その原因については「総合的に判断して、放射線の影響とは考えにくいと評価する」としました。一方で、公表された「甲状腺がんないしその疑い」の人数に反映されていない甲状腺がん患者がいることが明らかになり、原発事故との関連をきちんと調査できているとは言えない状況です。

甲状腺検査活動の4つの目的

生活クラブは生活クラブふくしまからの支援要請に応えるだけでなく、以下の4つを目的に、全国の生活クラブが参加して、独自の甲状腺検査活動を行なうことにしました。

・福島と他地域の検査結果を比較するために
・全国各地の子どもの甲状腺の実態を知るために
・子どもの甲状腺がん(および甲状腺に関わる疾患)の早期検診として
・脱原発活動につなげる


各地の生活クラブでは協力してくれる地域の医療機関や医師を探し、その協力を得ながら、震災当時に18歳までの組合員の子どもを対象に検査活動を毎年行なっています。道北勤医協旭川北医院院長の松崎道幸医師の監修のもと、年度ごとに検査結果と活動報告をまとめ、生活クラブ連合会の公式WEBサイトで公開。さらに、組合員が参加する報告会を実施しています。

活動の経過と展望

2012年度から2019年度までの甲状腺検査活動に、のべ5,542人の参加がありました(年度ごとの参加人数は下図参照)。活動を継続することで得られた検査結果と、福島県の「県民健康調査」の結果とを比較し、放射能による子どもたちの甲状腺への影響を明らかにしようとしています。生活クラブの活動でのサンプル数では単純な比較が難しいですが、子どもの甲状腺の自然経過を示す基礎資料として役立つ可能性があります。甲状腺の結節やのう胞が増減したり、消失・発生したり、サイズが変化したりする事例が見られることがわかってきています。

生活クラブの甲状腺検査活動は、2025年度までの継続を決め、今後も検査に参加した方の経過を見守っていきます。また、市民の立場から放射能による子どもの甲状腺への影響を見守ることで、国や福島県の甲状腺検査を監視し、行政の情報管理へ異議を申し立て、脱原発の活動にもつなげていきます。
2012~2019年度の甲状腺検査活動(生活クラブ全体)
※2019年度はコロナ禍により5つの地域で中止となりました。
当初、福島県の県民健康調査を受けた人たちは甲状腺検査の結果をきちんと知らせてもらえず、不満と不安を募らせていました。これに対し、生活クラブふくしまと市民グループが連携して交渉した結果、自己情報開示請求手続きが簡素化されることになりました。このことを多くの県民に知らせるため、復興支援カンパを活用して「福島民報」「福島民友」紙に新聞広告を掲載しました(2014年4月15日掲載)

生活クラブの甲状腺検査をたたえる

道北勤医協旭川北医院 松崎道幸さん

甲状腺がんが放射線被ばくで激増することは、チェルノブイリ事故ではじめて明らかになったのですが、福島事故が起きた直後、そもそも病気のない甲状腺は超音波検査でどのように見えるのか、のう胞の数や大きさは将来のがんのなりやすさを決めるのか、結節は一度できるともう消えないのかなど、たくさんの疑問と不安がすべての人々の胸にありました。
生活クラブの甲状腺検査は、そのような疑問と不安を解決するうえで、とても大きな役割を果たしました。のう胞も結節も、できたり消えたり、大きくなったり小さくなったりすることがわかりました。政府主導の福島県民健康調査では、これらのことはわからなかったのです。

また、この検査を通じて、市民の立場で甲状腺検査に協力をいただける医療スタッフのつながりがある程度つくられたことも、今後のための貴重な成果です。
県民調査の検診システムは、がんの疑いのある結節を持つ子どもさんを漏れなく診断するしくみになっていないため、公式発表を大幅に上回る甲状腺がんが発生しているだろうと考える必要があります。

「福島事故を忘れない」という市民の意志は、生活クラブの検査によって象徴されています。この意志を絶やさず、ともにすすんでゆきましょう。

放射能への不安を和らげる保養活動 生活クラブの「リフレッシュツアー」

数十年にもおよぶ放射能の影響から子どもたちを守るため、各地の生活クラブが福島県や栃木県の組合員の子どもと家族を招く「リフレッシュツアー」を、2011年度から行なっています。短い期間でも放射能の心配のない地域で過ごすことは、子どもたちの外部・内部被ばくを減らすとともに、家族にとっても放射能の不安やストレスを減らし、気持ちをリフレッシュする効果があります。リフレッシュツアーも組合員の復興支援カンパによって支えられている活動です。
 

「リフレッシュツアー」の重要性

生活クラブの「リフレッシュツアー」のような活動は、一般的には「保養」と呼ばれ、被ばくからの回復、安心して外遊びができる機会、放射能への不安を自由に語れる場の3つの役割があります。原発事故後から1~2年のうちは、被災者支援活動として多くの団体などで行なわれ、好意的に受け止められていました。しかし時が経つにつれ、放射能への不安を口にすることが復興への妨げと見なされる傾向も出てきました。また、財政難などで活動を続けられなくなる団体も増えています。こうした意味でも、被災地域の人たちにとって生活クラブのリフレッシュツアーは、貴重な存在となってきています。
 

「リフレッシュツアー」のはじまり

2011年6月に開催された連合理事会で、生活クラブ京都エル・コープから福島の子どもたちの一時避難を受け入れたいという提案がありました。その頃の福島市の放射線空間線量で試算すると、年間で10mSv前後の被ばく量になるのではないかという切迫した状況でした。この提案をうけ、生活クラブ京都エル・コープと生活クラブ北海道より、生活クラブふくしまへ呼びかけがあり、7月に初めてのリフレッシュツアーが実現しました。
 

活動の広がりとこれから

この活動は各地の生活クラブに広がり、2020年度現在で累計開催数は123企画、累計参加者数は1,861 人を数えます。国内だけでなく、韓国のドゥレ生協連合会の協力により、韓国でのツアーを実施したこともありました。2025年までの継続を決定しており、これからも必要とされる支援を続けていきます。

リフレッシュツアー開催概要(年別)

参加地域

生活クラブふくしま
◆こんなにも福島のことを考えてくれる人たちがいることに感謝
生活クラブふくしま 仲江望美さん

2011年の震災から10年。当時、小学4年生だった娘は大学2年生、幼稚園の年中だった長男は中学3年生、1歳だった次男は小学5年生になりました。
2011年から続いてきた活動を振り返って思うことは、「ほかの地域の生活クラブの組合員の皆さんとのつながり、出会いに感謝」です。

私は震災の年から毎年、リフレッシュツアーに参加させていただき、「福島に住んでいる私たちのことをこんなにも考えてくれている人たちがいる」と、参加するたびに実感しています。
リフレッシュツアーがなかったら、各地の生活クラブの皆さんとも出会うこともありませんでした。リフレッシュツアーがあったからこそ、たくさんの出会いがあり、福島ではできないいろいろな体験をさせてもらい、親子ともども心身ともにリフレッシュできました。受け入れてくれた皆さまには本当に感謝してもしきれない気持ちでいっぱいです。

リフレッシュツアーに参加してきて、この活動から見えてきたことは、やはりこの活動は継続していくべきではないかということです。震災から10年が経過した今でも、福島にはつらい気持ちを言葉にできずに、心の中で不安に思っている方がいます。リフレッシュツアーに参加して、たくさんの方と出会い、ふれあい、お話しし、いろいろな体験をしてリフレッシュすることはとても大切なことだと思います。
東京あきる野市の生活クラブ協同村にて
屋外でのびのび。すいか割りに大歓声
生活クラブ栃木
◆10年経っても思いが薄れることはありません
生活クラブ栃木理事 渡部加奈子さん

生活クラブがいち早く生活クラブふくしまを対象にリフレッシュツアーを始めて間もなく、「放射能汚染の影響に県境はない」との意見があり、2015年より生活クラブ栃木も参加するようになりました。これまでに組合員とその家族およそ300人が参加。毎年、各地の生活クラブや関係各所の皆さんのお世話になり、本当に感謝しています。

福島にほど近い栃木に住んでいて、目に見えない放射能汚染への不安や恐怖を感じています。ツアーに参加し、放射能への想いや知識を共有することで漠然とした不安と向き合うことができる。それが心のリフレッシュにつながっていると思います。
「一番よかったのは、放射能を気にせずに子どもたちを自然の中で思いっきり遊ばせることができたこと」。参加者は口を揃えてそう言います。

原発事故と放射能汚染はこれからも組合員とその家族の前に立ちはだかり続ける、それが現実です。それまで当たり前にできていたことができなくなりました。栃木県内の各所にはいまだにモニタリングポスト(線量計)が設置され、毎日、新聞やWEBサイトで空間放射線量率が公表されています。震災から10年が経ちますが、想いは決して薄れることなく重なり、濃くなり続けています。

「生活クラブのたすけあいは本当に素晴らしい。今度は私たちが誰かの役に立てるようになりたい」。ツアーに参加した組合員の感想で心に残ったフレーズです。これからも復興と支援の輪がつながり、活動が広がっていくことを願います。
秋川渓谷(東京)で放射能を気にせず思いっきり川遊び
2017年の夏休みにバーベキュー。生活クラブ山梨のツアーより
生活クラブ京都エル・コープ
◆リフレッシュツアーは原発被災を自分事と捉える機会
生活クラブ京都エル・コープ脱原発委員 二宮千明紀さん

2011年の通常総代会の際、総代から「生活クラブのつながりを使って、福島の子どもたちが短期間でも避難できる環境を京都エル・コープでつくれないか」という意見が出ました。これがきっかけとなり、生活クラブ長野の協力を得て、2011年の夏休みに生活クラブふくしまの大人8人、子ども18人を長野に招き、組合員活動としてのリフレッシュツアーが始まりました。翌年からは実行委員会を組織し脱原発委員会が主体となって、2020年の年明けツアーで11回を数えます。

「ツアーのなかで京都を楽しんでもらうには?」「子どもたちにはのびのびと、大人にはゆっくり過ごしてもらうには?」。回を重ねるなかで出てくる課題を何度も話し合い、なかでも参加者と京都の組合員の交流会には心を尽くしました。
毎回、参加者の話に共感し、教訓を得、時には行政や政府に憤りを覚えることも。そして、気がねなく土や草を触り、駆け回る子どもたちの笑顔に元気をもらいました。

「避難」という選択をしない理由はさまざまでしたが、母が子を想い、汚染された環境から逃れたいと考えてもそれをヨシとしない周囲の空気、家族内でも考え方に違いがあることを知りました。それは何年経っても同じでした。参加者は「ありがとう」とおっしゃいます。でも、本当は「こちらこそありがとう」だといつも思っています。

私たちは福井県の原発から70Km足らずのところで暮らしています。ツアーは京都の組合員として原発被災を自分事と捉え、実感を持って考える機会となっています。一刻も早くよりリスクの少ない状況へ、未来の人々に課題を残さない社会へ近づくよう、諦めずに続けていくことを願います。
醍醐寺にて。みんなで京都を満喫
生活クラブ北海道
◆見て見ぬふりをする大人ばかりではないことを伝えたい
生活クラブ北海道10万年プロジェクト 船橋奈穂美さん

1986年のチェルノブイリ原発事故以来、小児甲状腺がんの多発や子どもたちの健康状態が悪化している現地へ、生活クラブ北海道は30年以上、医療支援カンパを行なっています。2011年の福島原発事故後、チェルノブイリを教訓に、一刻も早い汚染地からの避難が最優先事項であるにもかかわらず、国は何もしないどころか安全神話を撒き散らし、被災者を混乱させました。

絶望感に包まれていたとき、組合員から「福島の子どもたちの保養ができる施設がある」との情報をいただき、急ピッチで保養計画をすすめましたが、残念ながら企業側の理解を得られず白紙に。でもこのまま黙ってはいられないと、必死で宿泊先を探し数週間で保養計画をつくり、生活クラブふくしまの組合員5世帯を迎え入れることができました。
翌年からは、ひとりでも多くの子どもたちに1日でも長く保養に来てほしいと、長期滞在型を中心に、短期保養、子どものみのホームステイなど、さまざまなプランを用意し、これまで700人を超える皆さんをお迎えできました。子どもたちは普段の旅行とは違うことを感じてか、少し不安な表情も見えましたが、保養後の顔は輝き、旅の疲れとともに帰路につきます。「また来てね」「また来るよ」と涙と笑顔で再会を誓い、再び元気な姿を見せてくれることが私たちの活力です。

放射能汚染と闘う不安のなかで常に判断を迫られる状況は続いています。私たちができる行動のひとつが「保養」です。本来であれば、被災者を守るために奔走しなければならない政治家たちが何もしないことを、子どもたちにどう説明できるでしょうか。せめて見て見ぬふりをする大人ばかりではないこと、多くの人々の協力があって保養ができることを、将来を担う子どもたちにこれからも伝えていきたいと考えています。

2019年の夏休み、北海道・積丹にて
★パンフレット『東日本大震災 復興支援活動 10年のまとめ … つながる、つづける、ともにゆく』(2021年3月11日発行)の転載です。
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