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あれから10年が経過しました。
2011年3月の震災発生時には、避難所で不安な日々を過ごす人々への緊急支援物資の提供を第一優先に行ないました。飲料水や米、食料品などの生活必需品を中心に全国の生活クラブの提携生産者にも提供を呼びかけ、64の提携先から多くの支援物資(概算で3,300万円程度)をいただきました。
また、生活クラブ連合会・各地の生活クラブ・グリーンコープ共同体など協同組合間協同で寄せられた支援物資は、岩手・ふくしま・やまがたの3つの生活クラブを搬送の拠点とし、被災された生産者では重茂漁業協同組合、㈱高橋徳治商店、㈱丸壽阿部商店の従業員の避難先の地域を中心に、また、組合員が在籍する新地町、相馬市、南相馬市(すべて福島県)ではそれぞれの自治体を窓口として継続的に支援物資の提供を行ないました。
なかでも西日本を中心に活動するグリーンコープ共同体より震災発生後の3月14日から、水・食料・衛生用品の支援物資を満載にした大型トラックが連日(計7便)、支援拠点に到着。当時、入手が困難であった軽油(トラックの燃料)20,000ℓを提供いただいたことは、食料と同様に生命がつながった思いでした。
2011年5月、各地で生活困窮者支援を行なってきたNPO法人ホームレス支援全国ネットワークとグリーンコープ共同体、生活クラブ連合会の3団体で、被災者支援共同事業体として「共生地域創造財団」を設立しました(のちに公益財団法人)。被災地の復興と未来に向けた共生地域の創造を目的に、出会いと関係性を大切にする「伴走型支援」を現在も行なっています。
2019年の台風など自然災害で被災した方、コロナ禍で収入が激減したり、職を失った方などへの支援は、同団体の7つの行動理念のひとつである「もっとも小さくされた者への偏った支援を小さくかつ継続的に行なう」に凝縮されているのではないかと感じています。被災者の皆さまに一日でも早く、ひとりでも多くの方に笑顔が戻るよう伴走型の支援を継続することが大切だと思います。
そして、対応がたいへん難しかったのが、福島第一原発事故による放射能汚染への対応です。
未曾有の緊急事態を受けて、チェルノブイリ事故以降、生活クラブが守ってきた自主基準値(セシウム37Bq/㎏)を適用せず、国の暫定規制値を一時的に採用したことは内外から多くの批判を受けました。が、その後、独自の厳しい基準を新たに設定し、年間約1万件の検査を実施、結果を公開して注文できるしくみを構築したことは、子育て世代をはじめとする組合員にとって大きな成果といえます。また、生活クラブ独自の子どもたちの甲状腺検査活動は、国が推し進めようとしている原発再稼働への抑止ともなることから、多くの参加のもと続けていきたい活動です。
最後に、東日本大震災ではカンパ活動を実施し、第1次~第10次まで寄せられたカンパは約7億6,000万円になります。また、2016年の熊本地震、2018年に発生した西日本豪雨と台風21号、北海道胆いぶり振東部地震、2019年の台風被災時に募集したカンパも含めると、10億円を超えるカンパ金が組合員、生産者の皆さんから寄せられました。それらをもとに継続した支援活動は多くの被災者を励まし、勇気づける結果となりました。この場をお借りしてあらためてお礼申し上げます。
2021年、新型コロナウイルス・パンデミックが長期化し社会のあらゆる分野が大きな影響を受ける中で、東日本大震災・福島第一原発事故から10年目を迎えることとなりました。
コロナ禍の日々を1年間近くも送る中で、折に触れて〈3.11〉に思いを馳せることが多くありました。人々の暮らしや被害にあった方々への支援に奮闘する人たち、家族や地域、職場で支え合いながらの毎日の暮らし、とりわけ弱い立場にある人々がより困難な状況に追い込まれる社会構造、こうした現実と10年前の〈3.11〉以降が重なってみえるのです。
そして10年前も今回も、私たちは生活クラブという場と機能を持っていることによって、一人で唇を噛みしめるのではなく、多くの仲間たちや生産者の皆さんと力を合わせて、組合員に呼びかけながら必要な支援を次々と具体化することができました。支援活動にかかる費用は基本的に組合員カンパで賄われていて、2020年度までの復興支援カンパの累計額は約7億6,000万円に及んでいます。
私たちは生活クラブを「道具」として、困難にある人たちと手をつなぐことができる、生活クラブにいてよかったと心の底から思います。この10年間、組合員の支援の意思を集めて、さらに思いを同じくする他の団体と力を合わせて、発災直後の対応から復興支援へとフェーズを変えながら一貫した支援活動を継続してきました。
これは大きな誇りです。
一方で被災地の復興状況は、地盤や道路、防潮堤などのインフラ整備はすすみましたが、人々の暮らしや地域社会の状況は復興には遠い実態があります。人口減少と高齢化の進行、支え合いの地域コミュニティは再生されず、基幹である第一次産業の衰退が止まりません。そうした中で近年の支援活動は高齢化や孤立、生活困窮への支援など、福祉機能の創出に力を注いできています。そこに到来したコロナ禍により生活困窮に陥る方がより増えており、地域経済の回復がまた一歩遠のく危機にあります。福島第一原発の廃炉作業も終わっていません。
こうした現状をふまえ、生活クラブの連合理事会では2025年まで復興支援活動を継続することを決定しました。組合員カンパの募集は終了しますが、残高を「災害復興支援カンパ基金」として造成し、今後の活動のために有効に活用していきます。また、時間の経過とともに被災地の状況も変化していきます。これからも現地を訪ね、そこに住む人たちの声をしっかり聴きながら、支援の内容を話し合ってすすめていきます。さらに2025年以降の活動のあり方も検討していかなければなりません。
10年間の実践の中で得てきたこと、築いてきたものが多くあります。気候変動による災害が多発する中、SDGsや気候危機への取り組みとも関連付けて考えていく必要があります。組合員カンパに込められた思いを次の社会づくりに繋いでいくことを、これからの5年間で議論し描いていきたいと思います。
最後に、この冊子に原稿を寄せて下さった方々、支援活動に参加された皆様、支援物資やカンパを寄せてくださった多くの組合員に心からの感謝を申し上げます。これからも被災地とともに歩んでいきましょう。
『東日本大震災 復興支援活動 10年のまとめ つながる、つづける、ともにゆく』 2021年3月11日発行
3・11を忘れない 東日本大震災から10年
はじめに
2011年3月11日の東日本大震災から10年が経ちました。震災により亡くなられた方、遺族の方々に心より追悼の意を表します。また、未だ再建の途上にある方、避難を続けている方々も多くおられます。被災地では10年の間に道路や建物などインフラ整備は進んだものの、暮らしの復興、コミュニティの復興はまだまだ先と言わざるを得ない状況です。
本冊子は震災から10年の節目に、これまでの活動(軌跡)を振り返り、ひとつの区切りとしてまとめたものです。これから何が必要か、何をしていくべきかを考えるために活用していきたいと思います。
★パンフレット『東日本大震災 復興支援活動 10年のまとめ … つながる、つづける、ともにゆく』(2021年3月11日発行)の転載です。
2011年3月11日の東日本大震災から10年が経ちました。震災により亡くなられた方、遺族の方々に心より追悼の意を表します。また、未だ再建の途上にある方、避難を続けている方々も多くおられます。被災地では10年の間に道路や建物などインフラ整備は進んだものの、暮らしの復興、コミュニティの復興はまだまだ先と言わざるを得ない状況です。
本冊子は震災から10年の節目に、これまでの活動(軌跡)を振り返り、ひとつの区切りとしてまとめたものです。これから何が必要か、何をしていくべきかを考えるために活用していきたいと思います。
★パンフレット『東日本大震災 復興支援活動 10年のまとめ … つながる、つづける、ともにゆく』(2021年3月11日発行)の転載です。
もくじ
被災状況と震災対応方針
東日本大震災の概要
2011年3月11日14時46分、宮城県沖を中心とするマグニチュード9.0の地震が発生、その後に押し寄せた津波により、東日本、とくに太平洋沿岸部で甚大な被害が発生しました。亡くなられた方は19,729名(災害関連死を含む)、行方不明の方は2,559名(2020.3.1現在)、住居の全壊は約12万戸、津波により農地2.4万ヘクタールが冠水、漁船の被害数は1.8万隻、被害漁港数は319と東日本の各地で壊滅的な被害がもたらされました。
さらに、津波により全電源を喪失した東京電力福島第一原子力発電所では、原子炉のメルトダウンが起きました。政府から緊急事態宣言が発令され、福島県では16万人を超える住民が避難を余儀なくされました。現在でも避難者は3.7万人(2020.7現在)、自主避難を続けている方々を含めるとさらに多くの方々が住んでいた場所に戻れていない状況です。
さらに、津波により全電源を喪失した東京電力福島第一原子力発電所では、原子炉のメルトダウンが起きました。政府から緊急事態宣言が発令され、福島県では16万人を超える住民が避難を余儀なくされました。現在でも避難者は3.7万人(2020.7現在)、自主避難を続けている方々を含めるとさらに多くの方々が住んでいた場所に戻れていない状況です。
生活クラブの被災状況
生活クラブ連合会では地震発生後、「危機管理マニュアル」にもとづき、即座に「緊急対策本部」を設置し、会員単協や生産者の被害状況の情報収集をしました。
会員単協では、生活クラブふくしまの組合員1名、生活クラブ岩手の組合員1名の方が亡くなりました。ふくしま、岩手、千葉、栃木、東京の5つの生活クラブで住居の全壊24 軒、半壊151軒の被害がありました。
生産者は、東北を中心に東日本にある25の製造拠点で被害がありました。なかでも㈱高橋徳治商店、㈱丸壽阿部商店、重茂漁業協同組合の3つの生産者は大きな被害を受け、多くの支援が必要な状況でした。
会員単協では、生活クラブふくしまの組合員1名、生活クラブ岩手の組合員1名の方が亡くなりました。ふくしま、岩手、千葉、栃木、東京の5つの生活クラブで住居の全壊24 軒、半壊151軒の被害がありました。
生産者は、東北を中心に東日本にある25の製造拠点で被害がありました。なかでも㈱高橋徳治商店、㈱丸壽阿部商店、重茂漁業協同組合の3つの生産者は大きな被害を受け、多くの支援が必要な状況でした。
生活クラブの震災対応方針
緊急対策本部で対策協議を続けるなか、被害があまりにも甚大なこと、刻々と時間が経つにつれて被害状況が激しく変化するなど、支援対象ごと、地域ごとに異なる支援や対応のあり方が求められました。機関会議での議論をふまえ、以下の震災対応方針を2011年6月の連合会通常総会で決議しました。
●共同購入事業の継続を最優先とする/●被災した生活クラブと生産者への支援/●被災地域への支援と協同組合間協同(のちに公益財団法人共生地域創造財団を設立)/●組合員カンパの実施/●原発事故対応(放射能自主基準の再検討と消費材検査)/●脱原発と再生エネルギーの推進
●共同購入事業の継続を最優先とする/●被災した生活クラブと生産者への支援/●被災地域への支援と協同組合間協同(のちに公益財団法人共生地域創造財団を設立)/●組合員カンパの実施/●原発事故対応(放射能自主基準の再検討と消費材検査)/●脱原発と再生エネルギーの推進
生活クラブふくしまに設けられた救援本部 2011年
山道から見える福島第一原発 2015年
福島県富岡町付近に掲げられたメッセージ 2015年
復興支援活動の振り返りと残された課題
震災被災者支援と放射能汚染への対応
笑顔が戻る日をめざし伴走型支援の継続を
笑顔が戻る日をめざし伴走型支援の継続を
生活クラブ連合会常務理事 渡部孝之
2011年3月の震災発生時には、避難所で不安な日々を過ごす人々への緊急支援物資の提供を第一優先に行ないました。飲料水や米、食料品などの生活必需品を中心に全国の生活クラブの提携生産者にも提供を呼びかけ、64の提携先から多くの支援物資(概算で3,300万円程度)をいただきました。
また、生活クラブ連合会・各地の生活クラブ・グリーンコープ共同体など協同組合間協同で寄せられた支援物資は、岩手・ふくしま・やまがたの3つの生活クラブを搬送の拠点とし、被災された生産者では重茂漁業協同組合、㈱高橋徳治商店、㈱丸壽阿部商店の従業員の避難先の地域を中心に、また、組合員が在籍する新地町、相馬市、南相馬市(すべて福島県)ではそれぞれの自治体を窓口として継続的に支援物資の提供を行ないました。
なかでも西日本を中心に活動するグリーンコープ共同体より震災発生後の3月14日から、水・食料・衛生用品の支援物資を満載にした大型トラックが連日(計7便)、支援拠点に到着。当時、入手が困難であった軽油(トラックの燃料)20,000ℓを提供いただいたことは、食料と同様に生命がつながった思いでした。
2011年5月、各地で生活困窮者支援を行なってきたNPO法人ホームレス支援全国ネットワークとグリーンコープ共同体、生活クラブ連合会の3団体で、被災者支援共同事業体として「共生地域創造財団」を設立しました(のちに公益財団法人)。被災地の復興と未来に向けた共生地域の創造を目的に、出会いと関係性を大切にする「伴走型支援」を現在も行なっています。
2019年の台風など自然災害で被災した方、コロナ禍で収入が激減したり、職を失った方などへの支援は、同団体の7つの行動理念のひとつである「もっとも小さくされた者への偏った支援を小さくかつ継続的に行なう」に凝縮されているのではないかと感じています。被災者の皆さまに一日でも早く、ひとりでも多くの方に笑顔が戻るよう伴走型の支援を継続することが大切だと思います。
そして、対応がたいへん難しかったのが、福島第一原発事故による放射能汚染への対応です。
未曾有の緊急事態を受けて、チェルノブイリ事故以降、生活クラブが守ってきた自主基準値(セシウム37Bq/㎏)を適用せず、国の暫定規制値を一時的に採用したことは内外から多くの批判を受けました。が、その後、独自の厳しい基準を新たに設定し、年間約1万件の検査を実施、結果を公開して注文できるしくみを構築したことは、子育て世代をはじめとする組合員にとって大きな成果といえます。また、生活クラブ独自の子どもたちの甲状腺検査活動は、国が推し進めようとしている原発再稼働への抑止ともなることから、多くの参加のもと続けていきたい活動です。
最後に、東日本大震災ではカンパ活動を実施し、第1次~第10次まで寄せられたカンパは約7億6,000万円になります。また、2016年の熊本地震、2018年に発生した西日本豪雨と台風21号、北海道胆いぶり振東部地震、2019年の台風被災時に募集したカンパも含めると、10億円を超えるカンパ金が組合員、生産者の皆さんから寄せられました。それらをもとに継続した支援活動は多くの被災者を励まし、勇気づける結果となりました。この場をお借りしてあらためてお礼申し上げます。
復興支援活動のこれから
2025年まで支援活動を継続
これからも被災地と共に
これからも被災地と共に
生活クラブ連合会会長 伊藤由理子
コロナ禍の日々を1年間近くも送る中で、折に触れて〈3.11〉に思いを馳せることが多くありました。人々の暮らしや被害にあった方々への支援に奮闘する人たち、家族や地域、職場で支え合いながらの毎日の暮らし、とりわけ弱い立場にある人々がより困難な状況に追い込まれる社会構造、こうした現実と10年前の〈3.11〉以降が重なってみえるのです。
そして10年前も今回も、私たちは生活クラブという場と機能を持っていることによって、一人で唇を噛みしめるのではなく、多くの仲間たちや生産者の皆さんと力を合わせて、組合員に呼びかけながら必要な支援を次々と具体化することができました。支援活動にかかる費用は基本的に組合員カンパで賄われていて、2020年度までの復興支援カンパの累計額は約7億6,000万円に及んでいます。
私たちは生活クラブを「道具」として、困難にある人たちと手をつなぐことができる、生活クラブにいてよかったと心の底から思います。この10年間、組合員の支援の意思を集めて、さらに思いを同じくする他の団体と力を合わせて、発災直後の対応から復興支援へとフェーズを変えながら一貫した支援活動を継続してきました。
これは大きな誇りです。
一方で被災地の復興状況は、地盤や道路、防潮堤などのインフラ整備はすすみましたが、人々の暮らしや地域社会の状況は復興には遠い実態があります。人口減少と高齢化の進行、支え合いの地域コミュニティは再生されず、基幹である第一次産業の衰退が止まりません。そうした中で近年の支援活動は高齢化や孤立、生活困窮への支援など、福祉機能の創出に力を注いできています。そこに到来したコロナ禍により生活困窮に陥る方がより増えており、地域経済の回復がまた一歩遠のく危機にあります。福島第一原発の廃炉作業も終わっていません。
こうした現状をふまえ、生活クラブの連合理事会では2025年まで復興支援活動を継続することを決定しました。組合員カンパの募集は終了しますが、残高を「災害復興支援カンパ基金」として造成し、今後の活動のために有効に活用していきます。また、時間の経過とともに被災地の状況も変化していきます。これからも現地を訪ね、そこに住む人たちの声をしっかり聴きながら、支援の内容を話し合ってすすめていきます。さらに2025年以降の活動のあり方も検討していかなければなりません。
10年間の実践の中で得てきたこと、築いてきたものが多くあります。気候変動による災害が多発する中、SDGsや気候危機への取り組みとも関連付けて考えていく必要があります。組合員カンパに込められた思いを次の社会づくりに繋いでいくことを、これからの5年間で議論し描いていきたいと思います。
最後に、この冊子に原稿を寄せて下さった方々、支援活動に参加された皆様、支援物資やカンパを寄せてくださった多くの組合員に心からの感謝を申し上げます。これからも被災地とともに歩んでいきましょう。
『東日本大震災 復興支援活動 10年のまとめ つながる、つづける、ともにゆく』 2021年3月11日発行
パンフレット紙面はこちらから読めます。
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