【生活クラブ消費材10原則コラムVol.2】国内の自給力を高めると共に公正な調達に努めます
“健康で安心して暮らせる社会”の実現のために、組合員と生産者が共に守りめざしていく「生活クラブの消費材10原則」。この「消費材10原則」の考え方や、消費材にどのように活かされているかについて紹介するシリーズ。2回目は前回に引き続き、持続可能な「経済・社会」をかたちづくっていくための原則についてご紹介します。
国内の自給力を高めるためにさまざまな取組みを行なっています
日本の食料自給率は1960年代から激減し、いまや先進国では最低水準にまで落ち込んでいます。生活クラブでは、共同購入を通じて国内の農業・林業・漁業・畜産業の持続力を高めることをめざしています。原材料や飼料についても国産のものを選び、国内自給力の向上をはかっています。例えばそのひとつが、生活クラブの鶏肉「丹精國鶏」です。
国産鶏種「丹精國鶏」
「丹精國鶏」は、三世代前から国内で育種された国産肉用鶏種です。実は、国内で食べられている市販の鶏のほとんどは外国産の鶏種です。「国産」とされていても、元は外国から輸入したひなを国内で育てたものがほとんど。いまや世界中の食用鶏のほとんどは欧米産の3~5品種で占められていて、日本で食べられている鶏の品種も、98%は欧米産の2品種、国産鶏種はわずか2%というのが実情です。しかし、種鶏を輸入に依存していると、輸出国で鳥インフルエンザなどが発生すれば、すぐに鶏肉の生産ができなくなる可能性があります。
生活クラブでは、食の供給を外国に頼らず自給力を高めるために、国産鶏種のブランド肉「丹精國鶏」を扱っています。日本の気候風土の中で、太陽の光と自然の風を受けて、丈夫で健康に育つように長年かけて育種開発された鶏種です。鶏の健康を第一に考えた環境で、飼料に抗生物質を混ぜることなく、原則無投薬での飼育を実現することができます。
飼料に国産の飼料用米も与えさらなる自給力アップへ
「丹精國鶏」は、飼料に国産の飼料用米も与えることで自給力アップに貢献しています。鶏の主な飼料はトウモロコシで、日本はほぼ全量を海外(多くはアメリカ)に依存しています。丹精國鶏は遺伝子組み換えでないトウモロコシを飼料に使っていますが、世界的な穀物の高騰が起こったときにはやはりその影響を大きく受けてしまう可能性があります。食の安全や食料の安全保障を考えると、飼料を含めた自給力の向上が欠かせないと考え、生活クラブでは鶏肉をはじめとする家畜類にも飼料用米の給餌を行なっています。
これまで西日本ではあまり盛んではなかった飼料用米づくりですが、「丹精國鶏」の生産者である㈱秋川牧園では、飼料用米の生産を積極的に広げています。飼料用米は遺伝子組み換えではないので安全性はもちろんのこと、減反された田んぼが有効活用できるというメリットもあります。また、秋川牧園で出る鶏糞からできた堆肥を飼料用米の圃場に使い、地域で資源を循環させるしくみによっても自給力を高めています。
海外の生産品についても公正で責任ある調達に努めています
食料の自給はとても重要ですが、国内で生産できない食べ物もあり、そうしたものについては、生活クラブでも海外産品や外国産の原材料も扱っています。そして海外の生産品の場合も、現地の生産者と信頼関係を築きながら公正な調達をめざしています。生活クラブが取り扱うコーヒー「パプアニューギニア エリンバリ」がそのひとつです。
現地視察や交流を重ね海外の生産者とも信頼関係を築く
「パプアニューギニア エリンバリ」は、パプアニューギニアの高地で無農薬・無化学肥料で栽培されているコーヒーです。原料チェリー(実)の買い付けから輸出までを現地のコンゴ・コーヒー社が担い、生活クラブの提携先である日東珈琲㈱が輸入、焙煎、生活クラブへの供給を担っています。そもそもの始まりは、日東珈琲㈱の社長が「飲んでみるとおいしい」と実感したことから、生活クラブとの関係へ結びつきました。
パプアニューギニアの現地へも、生活クラブの担当者や組合員が訪れて視察を実施しました。その結果、コーヒー豆生産者から組合員に届くまでの流通が明白であることや、価格決定方式が農家自身や地域社会への還元につながるものであることなどを確認しています。さらにコンゴ・コーヒー社の社長を日本に招き、コーヒーの焙煎から生活クラブへの供給に至る過程を見てもらい、生活クラブの考え方や品質、安全性について理解してもらう機会もつくっています。
現地の生産者の持続的な生産を支える取組みを
コンゴ・コーヒー社では、貧困をくい止めるために「エリンバリ・プロジェクト」という取組みをすすめています。コーヒー豆の生産農家に対し、豆の収穫から洗浄、乾燥などに細かく基準を設けてコーヒーの品質を高める一方、基準に合格した豆は通常より最高で25%高い価格で現金買い取りしています。このことにより、農家は生活にゆとりがもてるようになったといいます。生活クラブが共同購入しているのはこの高品質な豆。生産者が誇りをもって生み出した高品質な作物を適正な価格で共同購入することによって、現地の生産者が安定して生産を持続していくことができます。生活クラブは今後も、国内はもちろん海外の生産者とも信頼関係を築きながら、消費材の共同購入をすすめていきます。
組合員と生産者が共に協力し持続可能な「経済・社会」へ
国内、海外、どこの土地で生産されたものであっても、その食べ物を生産する人との顔が見える関係を大事にし、共に消費材を育て、持続可能な経済や社会へとつなげていく。私たちは「生活クラブの消費材10原則」に従って消費材をつくり、使い、食べていくことで、“健康で安心して暮らせる社会”の実現をめざします。
今回紹介したのは、
第3原則 国内の自給力を高めます
第4原則 公正で責任ある原材料の調達をめざします
という2つの原則でした。【次回は、第6・第7・第8原則について紹介します。】
生活クラブの消費材10原則
(経済・社会に関する原則)
第1原則 安全性を追求します
第2原則 遺伝子操作された原材料は受け入れません
第3原則 国内の自給力を高めます
第4原則 公正で責任ある原材料の調達をめざします
第5原則 素材本来の味を大切にします
(環境に関する原則)
第6原則 有害化学物質を削減します
第7原則 3Rを推進し、さらなる資源循環をすすめます
第8原則 温室効果ガスの排出削減をすすめます
(自治に関する原則)
第9原則 積極的に情報を開示します
第10原則 独自基準を定め、自主的な管理をすすめます
【2018年8月20日掲載】
生活クラブ消費材10原則コラム
vol.1 安全性と素材本来の味を大切にします(2018.7.30)
vol.2 国内の自給力を高めると共に公正な調達に努めます(2018.8.20)
vol.3 生命の基礎となる「環境」を守ります(2018.9.3)
vol.4 「ガバナンス(自治)」を大切にします(2018.9.25)