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多様な人たちが集まるパン屋さんを、多様な人たちが経営する 「みんなのかまど」(長野県)【後編】

【連載】みんなで広げる たすけあい


生活クラブグループの生協や関連団体では、福祉・たすけあいの活動や事業が各地でとても豊かに展開され、さらに広がりをみせています。これらの取組みを紹介します。
 

長野県岡谷市にあるパン屋さん「みんなのかまど」。いまでは、多様な人たちが集まる「居場所」にもなっています。しかし、一朝一夕でここまで来たわけではありません。さまざまな課題に直面し、その都度乗り越えてきました。

【後編】

設備を充実させるには…

パン屋「みんなのかまど」で働く仲間をさらに迎えるためには、事業を広げる必要があります。
そして、事業を広げるためには、設備を充実させることが必要です。

代表の岡澤三保子さんをはじめ「ワーカーズ・コレクティブ地域のかまど」のメンバーたちは、新しい窯の購入を考えるようになりました。
※働く人の協同組合。働く人全員が出資し、経営に責任をもち、労働を分担します。
 
岡澤三保子さん

でも、パンを焼くための窯はとても高額です。
その資金をどのように準備したのでしょうか?

生活クラブ福祉事業基金に応募

2023年12月、生活クラブ長野の推薦を受けて、ワーカーズ・コレクティブ地域のかまど(以下、地域のかまど)は、生活クラブ福祉事業基金に応募することになりました。


2024年3月の審査会で、岡澤さんは窯の購入の必要性・購入後の展望などを懸命に伝えました。
その思いは審査員たちに届き、300万円の助成金を購入資金の一部に充てることで、新しい窯(石窯式の大型オーブン)を「みんなのかまど」に迎え入れることができました。

窯は「生活クラブ福祉事業基金」の助成金で購入

この窯が活躍して、いまではクロワッサンやフランスパンなどをつくることができるようになりました。
特にクロワッサンはお客さんたちに大人気です。


人気のクロワッサン

また、生活クラブ長野では「みんなのかまど」の食パンを「諏訪ブロック」という地域に限定して届けてきましたが、新しい窯のおかげで2025年4月からは「松本ブロック」「伊那ブロック」にも広げることができるようになりました。

地域のたすけあいへ

「みんなのかまど」は、来店者とのコミュニケーションを大切にしています。
会話を楽しみながら、買い物ができる場があることが、地域のたすけあいにもつながっていくと考えるからです。


お客さんと話す小倉佳美さん

例えばこんなできごとがありました。
「ある日の夕方近くに、ひとりでパンを買いに来た子どもがいました。話を聞いてみると、母親の体の具合が悪いのだとわかりました。そのため、夕食になるようなものを急遽作って渡しました」。岡澤さんはそう説明します。
「歩いてパンが買いに来られなくなった方にはお届けもしています。ちょっとした気づかいで地域の支え合いができると思うのです」。

なぜパン屋さん?

開業して以来、就労支援や地域の支え合いを地道に実践してきた「みんなのかまど」。
そもそもパン屋さんを選んだ理由は何でしょうか?

その理由のひとつ目は、パンの製造工程が細かく分かれていることです。それにより各自が得意な作業を選ぶことができるのです。

ふたつ目は、生活クラブ長野の遊休施設・設備が活用できたことです。

さらに、生活クラブ長野では共同購入のパンの生産者が撤退し、組合員へのパンの供給が事業として見込める状況もありました。これが3つ目です。

なぜワーカーズ?

事業の種類はパン屋さんに決まりました。
それでは、組織の形としてワーカーズ・コレクティブを選んだ理由は何でしょうか?

「利益優先ではなく、仲間と同じ意志をもって対等に働きたい」という思いです。
「今は当たり前のように働いている人も、介護やメンタルヘルスなどで一般就労が難しくなることもあります。子育てなどでフルタイムの仕事がしづらい時期の人もいます。それぞれの事情を認め合った働き場をつくろうと思いました」。岡澤さんはそう説明します。

岡澤さんをはじめ「就労支援プロジェクト」※のメンバー3人が中心となって「ワーカーズ・コレクティブ地域のかまど」を立ち上げることとなります。
※生活クラブ長野が「誰もがつながりを持って、安心して暮らせる地域」をつくることを目的に2019年に立ち上げたプロジェクト。議論をする中で、障がいを持つ人をだけではなくさまざまな人が「共に働く」場づくりを目ざすことになった。

3人の中心メンバーのひとり、小倉佳美さんは生活クラブ生協長野の元理事で、就労支援プロジェクトのメンバーでした。
岡澤さんが「就労支援のパン屋を立ち上げようと思ってること」「小倉さんとぜひ一緒やりたいこと」を伝えると、小倉さんはふたつ返事で受けてくれました。
小倉さんは、障がい者支援の仕事の経験を持つだけでなく、かつてパン屋さんを自営していたのです。
そして、もうひとりの仲間とともに3人が中心となり、「ワーカーズ・コレクティブ地域のかまど」を立ち上げることができました。
 
小倉佳美さん

「かまどは温かくて人が集まってくる場所なので、『地域のかまど』と名づけました」。(岡澤さん)

「パン屋さんをやる」ということを決め、「ワーカーズ・コレクティブ地域のかまど」を立ち上げることまではできました。

しかし、小倉さん以外のメンバーたちはパン作りに関しては全くの素人でした…。

〝師匠〟と練習を繰り返す

この危機を救ったのが、生活クラブ長野の職員で、かつてパン作りをしていた上原さんです。

 

上原さんを〝師匠〟に練習の日々が続きます。
「1日中立ちっぱなしで体中が痛みました」と岡澤さんは話します。

2022年10月15日。
心強い仲間たちに支えられて、パン屋さん「みんなのかまど」は開店の日を迎えることができました。


「地域のかまど」の現在のメンバーたち

みんなが働きやすい場

前編でご紹介した、「計量の清水」こと清水颯斗さん。
ここで働くようになったきっかけは、プレオープンイベントの日のことです。

近所に住む清水さんは、「単発の仕事ならお手伝いしますよ」とプレオープンのイベントに立ち寄りました。
そして、「これまでいろいろな仕事をしてきましたが、精神障がいがあるため1か月以上継続したことがなかった」というのです。

「ところが、パン生地の計量などの作業を任せるととてもよくできるのです」と岡澤さん。
計量だけでなくさまざまな仕事をしっかりと任せることができます。

働きづらさはそれぞれに壁を作った不寛容な社会から生まれたもの。
多様な人が働く姿を地域に発信して、みんなが暮らしやすい地域をめざしていきます。

大変だったけれど

立上げを検討していたときに「誰がやるの?」と問われて、「私がやります」と手を挙げた岡澤さん。その後のことについて「本当に大変でした」と岡澤さんはいいます。

「でも、そんな日々も今から振り返れば楽しかったです」。

そのときどきの課題に真剣に向き合い仲間が増えた今、つらくも楽しかった日々について少しゆとりをもって振り返ることができるようになったようで、その表情は充実感に満ちていました。
 


【2025年5月21日掲載】

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